在宅ワーク歴5年の社長が教える 育児と両立のコツ
緊急事態宣言をきっかけに、休校要請だけでなく保育園休園や自粛も相次ぐなかで対応に追われている働くママ・パパは多いのではないでしょうか。
私は5年間リモートワークを中心とする働き方をしており、経営する会社ではフルリモート・フルフレックスを導入しています。そのため、このような状況下でも特にワークスタイルは大きく変わりませんでした。そこで今回は、リモートワーク歴5年の私が「リモートワークで重要だと考えるスキル」や「子どもがいながらのリモートワーク」について紹介します。
リモートワークはスキル
私が経営する会社MaVie(マヴィ)では、以前からメンバー全員が「決まった時間に決まった場所に出社をして時間を拘束される」ということはありません。そのため、時間の使い方はセルフコントロールが必要。すべてにおいて自己管理と自己責任となります。
当社では働くママが多いこともあり、もともとメンバー全員が「パフォーマンスが出しやすい時間帯」と、「合間にチェックはできるけどまとまった業務は難しい時間帯」を報告して、チーム全員で把握をしています。そうすることで、「あの人が次に確認できるタイミングは16時だから、それまでにまとめて依頼をしよう!」との体制強化だけでなく効率化にもつながっています。
これを読んでくださっている働くママ・パパの皆さんも、子ども在宅期間中の業務しやすい時間帯を上司や同僚に伝えておくとよいかもしれません。
ところで在宅勤務をするまでは、リモートワークというと「自宅で家事をしながら、自由に仕事ができるのでは?」「楽そう!」と思われていた方も少なくないのではないでしょうか。リモートワークが普及してきたここ数カ月で、「そんなに容易でない」ことが認知されてきたことを実感します。また子どもが在宅か否かでも、リモートワークで発揮できる仕事のパフォーマンスは全く異なります。
そこでまず子どもの有無は関係なくリモートワークで重要な「時間の使い方」と「コミュニケーション力」について書いていきます。
◆時間の使い方
リモートワークは、その日の働く場所が「自宅」なだけです。仕事の業務内容や量はなにも変わりません。求められるクオリティーも従来と同じです。
そのため、分刻みで社外とのオンラインミーティングや社内会議が入っていたり、その合間には各種業務連絡の確認や返信をしたり……。自身の作業をしていると、ランチや休憩時間を取れないこともよくあります。あっという間に1日が終わり、「もうお迎えの時間! 夕飯どうしよう!」というのが日常です。
私の場合は在宅ワークだと、とにかく働きすぎてしまう傾向にあるので、意識的にその日の時間割をざっくり固めています。ポイントは、ミーティングではない業務も予定表(Googleカレンダー)にいれること。そうすることで、仕事のリズムがつき「あれ、あと今日やることなんだっけ?」ということもなくなるのでオススメです。
A案件、B案件とあるのは、ミーティング以外の仕事です。また上記のスケジュールの合間にやることは、終日スケジュールにいれておきます。(例:「Aさんへの確認連絡/ ●●提出」など)
一つ一つのタイムスケジュールが早く終わった場合、余白時間の使い方は自分次第。おやつ休憩してもいいし、掃除機かけてもいいし、夕飯の準備をしてもいいし、他の仕事を進めてもいいのです。
◆コミュニケーション力
オフィスで同じ空間にいるなら「気軽に話しかけて解決!」していたようなことも、リモートワークではすべてSlack(スラック)などのチャットを使ったテキストコミュニケーションになります。となるとパフォーマンスが落ちる人が一定数いるのは事実。フリーランスや副業人材が増えていますが、オフライン・オンラインともにコミュニケーション力が高い人は本当に少数だと実感しています。
この伝え方で本当に相手は理解できるか? 齟齬(そご)が生まれないか?
この資料の見せ方で、きちんと意図が伝わるか?
しつこいくらいきめ細かく配慮しながら仕事をしていくことで、オンラインでもコミュニケーションがとってもスムーズになります。
子どもとの在宅ワークのコツは
◆子どもがいる時間は割り切りが肝要
もう1カ月以上休園・休校要請でお子さんとの在宅ワークが続いている方も多いのではないでしょうか。働く親だれもが大変な時期ですよね。
私も2歳8カ月の娘と共に在宅ワーク中ですが、産後まもなくから子どもと在宅ワークをしているので、子どもと一緒にいながら効率よく仕事をするための時間の使い方はつかめているつもりです。
ですが、たくさん昼寝してくれる乳児期はとっくに過ぎ、今は体力あふれるパワフルな2歳児に成長。昼寝をしないうえに、変な時間に寝てしまうと夜寝なくなる……という成長に伴う課題も発生。
そのためなるべく日中は、オンラインミーティング以外は子どもを優先することを決めています。
もちろん過去には日中に子どもを見ながら仕事をしようと試みたこともありますが、「仕事がしたい!」と焦る親と「かまってほしい!」子どものせめぎ合いからは何もよいアウトプットは生まれません。それからは、時間の使い方を下記ように割り切ることに決めました。
・集中したい仕事は、子どもが起きる前or寝た後に
・ながらでもできる作業系はスキマ時間にササッと対応
子どもが1人で集中して遊びだしたとき
お昼寝
動画やEテレタイム
隣でお絵描きやドリル……など
・日中対応しきれなかった当日期日のタスクは夜や翌朝に回す
私の場合はこれで、とっても効率がよくなりました!
日中は子どもと過ごすことを優先することで、子どもも自粛期間のストレスを必要以上にためずに穏やかでいられると思いますし、自分も余裕を持って子どもと接することができます。親子ともに幸福度UPとなる時間の使い方に割り切ってシフトすることはおすすめです。
◆子ども在宅×オンラインミーティング問題は、夫婦で解決
最近よく相談されるのが、「ミーティングのとき、子どもはどうしているの?」という問題。
我が家の場合ですが、夫も在宅ワークになっていることもあり、お互いのオンラインミーティングの時間を把握しています。そして重ならないようにすることがポイント。
社外の打ち合わせのときは、ミーティングをしない方が娘を外に連れ出して散歩したり公園で遊んだりしています。最近は暖かい日も増えたので、ベランダでピクニックやプールも喜びます。雨の日は、別室対応。
別室で遊んでもらっても飽きると「ママー!」と走ってやってくるので(笑)、ママメンバーも多い自社ミーティングや子どもの声がしても問題ないときは、特に気にしていないですが、社外の大事な打ち合わせのときはなるべく外に連れ出してもらっています。
雨の日は仕方ないので、夫に別室で遊んでもらったり、車でドライブしたり。夫がいないときは好きなDVDを見せたりして対応しています。
社外の打ち合わせでも子どもの声がしてもOKな場合と、そうでない場合があると思うので、そのあたりの温度感も含めて臨機応変に対応しています。
◆子どもの年齢や人数によって課題はさまざま
乳児期は、子どもがまとまって昼寝をする数時間に集中して業務にあたることもできましたが、それも毎日あるとは限らない。なかなか寝ないときもありますし、子どもがいると、毎日同じリズムで進むことはありませんよね。我が家のように、お子さんによっては全く昼寝をしないこともあるので、そうなると日中は子どもにつきっきりです。
これは乳幼児に限らず、小学生のお子さんがいる方も。子どもの宿題や課題を見てあげたり、子どもがずっと話しかけてきたりするから仕事にならないという声も聞きます。また年の離れた兄弟がいる家庭では、一緒に遊ぶことができないので個別ケアが必要など、家庭によっても課題はさまざまです。
子どもの有無に限らず、緊急事態のこういった状況は、できる限り同僚や上司など周囲の人へ共有するために、「今こんな状況です」と自ら発信することも今の時期は必要だなと感じています。
日本の働くママたちは完璧主義の方も多いと思いますが、この期間だけでも完璧主義から離れて、うまく力を抜いてみませんか。今の日本で100%育児も仕事もパフォーマンスを出せている人はいないはず。みんな一緒です! 今の時期は、5割もできていれば上出来!という気持ちでいきましょう。
◆最後に
今後の状況も全く予測がつかず、収束するまでは時間がかかりそうですね。
今の生活は一時的なものではなく、長期的に続くことを想定して、働き方はもちろん生活環境における工夫なども必要になってきます。また近いうちに緊急事態宣言が解除されても、すぐに今まで通りに戻ることはないでしょう。今後は在宅を軸としたワークスタイルに変化していくのではないでしょうか。
これを機に「子どもと共に働く」ということは、今後も定期的に起こりうるケースだと想定して、一時的な対応ではなく長期的に対応可能とする工夫を考えていきたいですね。働くママ・パパのみなさん、長引く子どもとの在宅ワークも楽しんで過ごしていきましょう!
株式会社MaVie代表取締役。東京都出身、1児の母。2009年に大手住宅メーカーで社長秘書と広報を兼任後、企業の広報責任者として数社の広報室立ち上げや再構築などに従事。2015年広報コンサルタントとして独立、2019年MaVie創業。広報ブランディング支援、商品・サービス監修、女性のキャリアデザインに特化したオンラインコーチングや研修・セミナーを手掛ける。ミレニアル世代の育児と仕事の両立を考えるコミュニティー「M relations(エム・リレーションズ)」では、子育てしながら働く女性の交流促進やナレッジシェアを支援している。公式サイト https://mavie.style/
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