ひらめきブックレビュー

いつまでもとれない疲れを解消 副腎の機能に注目 『疲れがとれない原因は副腎が9割』

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以前は元気だったが、ある時期から急に疲れるようになった。朝起きてもスッキリせず、身体が重い。同じような人はいないだろうか。こうした「いつまでも取れない疲れ」は年齢のせいだと思っていたが、実はそうではないのかもしれない。

本書『疲れがとれない原因の9割は副腎』は、副腎疲労のメカニズムや原因、対処法について典型的な症状を紹介しながら解説したものだ。医学博士である著者の御川安仁氏は「できるだけ薬を使わずに治療する」ことを診療方針の一つに掲げるナチュラルアートクリニックを東京都千代田区で開いている。

著者は、副腎を酷使すると「副腎疲労症候群(副腎疲労)」が生じると提唱する。副腎とは腎臓の上にある小さなおにぎり形の臓器で、人間の活力に不可欠なホルモン「コルチゾール」を分泌する。副腎疲労とは副腎の働きが弱まりコルチゾールが十分に分泌されなくなる状態を指し、病気ではない。慢性的に疲れている人に見られ、著者の経験では、同時に慢性的な疲労感やアレルギー、うつ症状などが観察されることもあるという。

副腎疲労は、健康診断の数値にあらわれない。副腎自体が頑丈な臓器なので、激務やストレスが続いていても身体を働かせようと、コルチゾールを分泌し続ける。そのため副腎疲労の初期段階では、コルチゾールの作用によりむしろ活力があり、ハイな状態であることも多いという。だが、「動けるから」と体を動かし続けると、副腎は酷使され続け、疲弊する。最終的には身体が疲れ果て、動けなくなることさえあるのだという。

■食の改善で腸を整える

著者は副腎疲労の主な原因が「休息の不足」「過剰なストレス」「忙しい生活」「バランスのとれていない食習慣」にあると言う。そして悪い状態を改善するためのポイントとして、「腸」「脳」「ミトコンドリア」「栄養」の4つを挙げる。

食生活の乱れなどによって腸内環境が悪化すると、腸の炎症が起こる場合がある。こうした炎症を抑えるためにコルチゾールが産出されてしまう。そこで、食事を見直して腸内環境を整えることが大切になる。また、ストレスをコントロールし、恒常性をつかさどる脳機能を改善することも望ましい。慢性的かつ過剰なストレスは自律神経や免疫系に影響する。あえてスマートフォンに触れない時間をつくったり、日常生活にマインドフルネスを取り入れたりすれば心の落ち着きにつながる。

人体の細胞内の小器官であり、エネルギー源をつくるミトコンドリアの役割も重要だ。ミトコンドリアを活性化するためには運動をして筋肉をつけるのがいい。副腎疲労を改善する栄養素として、本書ではマグネシウム、ビタミンB群、タンパク質、ビタミンDなどが推奨されている。

自分の普段の生活を振り返ると、疲れているときは栄養ドリンクやお菓子などですぐに元気になる方法を求めていた。しかし、その発想が、結局は終わらない疲れの悪循環を引き起こしていたのかもしれない。本書をきっかけに外食中心だった食生活を改め、自炊を始めてみたい。

今回の評者 = 若林智紀
情報工場エディター。国際機関勤務の後、人材育成をテーマに起業。その後、ホテル運営企業にて本社人事部門と現場マネージャーを歴任。多岐に亘る業界経験を持つ。千葉県出身。東大卒。

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