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東芝の第三者委員会は内部統制機能の不備を指摘した(2015年7月の記者会見)

東芝の第三者委員会は内部統制機能の不備を指摘した(2015年7月の記者会見)

大きな会社で内部通報があって問題になったというニュースをたまに見るけど、普通の企業ではどれくらい行われているのかしら。いやがらせとか本当にないのかな。

内部通報制度について、高橋めぐみさんと植木樹理さんに渋谷高弘編集委員が解説した。

――内部通報って、いつから注目されるようになったのですか。

内部通報とは、経営者や管理部門が把握していない犯罪、不正、不祥事などの法令違反を、従業員が自社の窓口に通報することをいいます。この制度がないと、怒りを抱いた従業員が報道機関などに告発する可能性が高まります。会社は「不正を隠蔽していた」などと報じられて、大きなダメージを被ります。

内部通報制度が企業に意識されるようになったのは、大手金融機関が総会屋に利益供与するなどの不祥事が相次ぎ発覚した1990年代末からといわれます。そして従業員に内部通報を促すため、通報者を解雇などの不利益な取り扱いから守る「公益通報者保護法」が2006年4月に施行されました。15年にできたコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)は上場企業に内部通報制度を備えることを求めています。

――実際にしている人はいるのでしょうか。

東洋経済新報社の「内部通報が多い企業ランキング」最新版で5年連続トップになったセブン&アイ・ホールディングスは、前の年より200件以上も増えています。年間の通報件数が100件以上の会社は70社以上です。内部通報に詳しい西垣建剛弁護士は「目安として、従業員100人あたり年間1件という考え方が定着しつつある」と指摘しています。

近年では企業不祥事の大半は内部通報がきっかけで発覚するとさえいえます。日産自動車のカルロス・ゴーン元会長の逮捕劇も、内部通報が始まりでした。オリンパスの巨額粉飾事件や東洋ゴム工業(現TOYOTIRE)の品質データ改ざん問題なども内部通報、または通報を握りつぶしたことを発端に発覚しました。企業不祥事に詳しい国広正弁護士の事務所は90年代末ごろから企業の通報窓口を担当しており、現在も10社以上の窓口を担っています。「年間100件以上の通報を扱っている」そうです。

――通報したら、仕返しされてしまうのでは。

70年代にトラック業界の闇カルテルを告発したトナミ運輸元社員が定年まで32年間も閑職しか与えられなかった事例は有名です。公益通報者保護法施行後の06年、トヨタ自動車系販売会社の社員が実績水増しを通報したところ、窓口の弁護士事務所が社員の氏名を会社に知らせ、社員は自宅待機命令を受けました。

そのほか手抜き工事を通報した現場の下請け監督が自宅待機の後に解雇されたり、上司の不法行為を通報した社員が畑違いの部署に異動させられたりした事例があります。

18年に発覚したスルガ銀行による不正融資問題は、多くの従業員が認識していました。内部通報を利用しようと思ったものの結局やめたという人が200人弱もいたと、第三者委員会報告書は指摘しています。20年3月に閣議決定された改正公益通報者保護法案では通報者特定につながる情報を守秘するよう義務付けました。しかし報復した事業者に対する行政措置や刑事罰は導入されていません。

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