休業生かして、研修を実施

社員の解雇や給与カットはせず、研修の期間にした。

00年に社長を弟の孝信(現会長)に任せて会長になっていたが、危機に際して私も最前線に立つ決意をした。地震から10日後、全員を集めた集会で「縁あって加賀屋に来てくれた皆さんのために、全力を尽くす。今後のことは心配しなくていい」と語りかけた。

妻で女将の真弓も「今まで仕事が忙しく、みんなで話す時間もなかった。休業はコミュニケーションを取るいい機会になる。めげずに頑張ろう」。涙、涙の集会で従業員の結束が強まった。

再開時には一段上のおもてなしをしようと、研修を実施した。旅館組合の部屋を借り、客室係はサービスやお茶の訓練を受けた。板前は石川県出身の料理人、道場六三郎さんに紹介された有名店や、最新の調理器を使うレストランで指導を受けた。先々で収入につながるのは、社員のスキルアップだと確信していた。

4月28日、再開にこぎつけた。「もっと高い部屋に入れてくれよ」。普段は旅行をしない知り合いも応援を兼ねて泊まりに来てくれた。補修費は10億円、宿泊の収入は1カ月なし――。ただ、危機を経て社員の気持ちが一つになるという大きな財産を得た。

[日経産業新聞 2015年3月9日付]

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