ひらめきブックレビュー

外出自粛で衝突リスク 妻がキレない夫婦関係の作り方 『なぜ、突然妻はキレるのか?』

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私ごとで恐縮だが、夫婦で在宅勤務をしているなか、4歳の娘の自宅保育が始まった。そのため、仕事をしながらできる範囲で娘の相手を、夫婦どちらかがしなくてはならない。同じような境遇の人も多いことだろう。

私がどうしても手が離せないときに、夫に娘の世話を頼んだ。するとあろうことかスマホで動画を見せ始めたのだ。「ちょっと待った!」と思うのは私だけではないはずだ。だがこんなときに、頭ごなしに怒り、スマホと娘を取り上げてはいけないということが本書を読んで理解できた。反射的な負の感情の表明が、多くの場合に夫を戸惑わせる。妻が「夫の振る舞いを正すには怒らざるを得ない」と考えたとしても、夫の側が「妻の怒りは当然だ」と受け取るわけではない。

なぜ、突然妻はキレるのか?』は、教育コンサルタントで感情マネジメントの専門家である嶋津良智氏が、男女間の良好なコミュニケーションの取り方や怒りのコントロール方法について解説した一冊だ。良好な夫婦関係をつくるための考え方やスキルについてアドバイスしている。なお、本書は2018年に出版された『男と女の怒らない技術』を大幅に再編集したものだ。

■「夫婦の幸福」という視点

夫婦の怒りの9割は「価値観の違い」だと著者はいう。一緒に生活しているからこそ、小さなことから大きなことまで、様々な価値観の違いが目につくのが夫婦というものだ。だから感じた違和感をどのように扱うかが、夫婦の関係を左右する。

そこで著者が薦めるのは「8割スルー、2割話し合い」の法則だ。「それはおかしい」と思ったときに、すべてを伝えるのではなく絞り込む。その際に「夫婦の未来にとって大切かどうか」「家族の幸福につながるか」という観点を持ち出すことが重要だという。

実は私の夫は、一日に3回もシャワーを浴びる。違和感はあるものの夫婦の幸福や未来にとっては、さほど問題ではない。だからこの点にはあえて苦言を呈しない。しかし冒頭の例に出した「子どもをスマホ漬けにする」振る舞いは、家族の幸福に関わる重要事項だと私は考えている。だからこの点に関しては夫ときちんと話し合い、価値観を擦り合わせることが必要ということになる。

このように絞り込みを意識すれば、2割程度の問題についてだけ夫婦が膝を突き合わせて話し合えばよいと著者は実感を込めて語っている。相手に対するイライラのうち、本当にお互いのためになるものは少ないのだ。

本書のタイトルにある「なぜ、突然妻はキレるのか?」に共感してしまう夫と妻は、双方ともきっとこの「8割2割」の切り分け方針を理解していないのだ。それはズバリ「夫婦2人の幸福」という視点を持っていないということだ。夫婦げんかがヒートアップしてしまう前に、ぜひ実践してみて欲しい。

今回の評者 = 安藤奈々
情報工場エディター。8万人超のビジネスパーソンに良質な「ひらめき」を提供する書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」編集部のエディター。早大卒。

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