トイレットペーパー、なぜ不足? 物流がネックに
品切れを防ごうと、販売制限を設ける店舗は少なくない(東京都立川市)
感染症や災害が発生すると、トイレットペーパーなどの必需品が店頭から姿を消しがちね。不安な消費者心理が買いだめを呼ぶのかな。必需品の生産から消費・備蓄までの流れを、確かめてみたいわ。
必需品の不足を巡る問題について、内田厚子さんと合川瑞穂さんが志田富雄編集委員に話を聞いた。
――マスクは今でもなかなか手に入らないわ。
衛生用品の業界団体によれば、2018年度に国内で供給されたマスクのうち、日本製品は2割にすぎません。7割は中国からの輸入に頼っています。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、中国でマスクの需要が急増し、日本に輸出できなくなったことが主因です。
マスクの材料に使う不織布も、中国などからの輸入が多いです。日本政府は国内企業に増産を求め、家電大手シャープなども生産を始めました。ただ、需要が劇的に増えており、以前のように店頭に並ぶようになるにはまだ時間がかかるかもしれません。
感染症以外でも姿を消しがちなトイレットペーパーは、事情が違います。国内で供給されるトイレットペーパーの9割以上は日本製で、製紙原料のパルプや木材チップ、古紙も中国からの輸入には頼っていません。ところがインターネット上で間違った情報が流れ、消費者が買いに走ってしまったのです。
――国内で供給できるのに、不足解消までに時間がかかるのはどうしてですか。
卸からドラッグストアなどへの輸送能力に限界があるからです。トイレットペーパーやティッシュペーパーといった家庭紙はかさばるうえに価格が安い、もうかりにくい商品です。積み下ろしもドライバーがやらなくてはなりません。大部分を専門の輸送会社が請け負っています。
小売店も都市部ほどスペースが限られ、トイレットペーパーなどを大量に在庫で持っておくことはできません。普段は需要が安定してますから、消費される分を日々運んで補充しているのです。こうしたサイクルが需要急増で崩れてしまいました。ただ、マスクと違い、トイレットペーパーは国内生産で十分まかなえるので、需要が落ち着くとともに店頭に並ぶようになったのです。