テレビ会議で相手を引き込む しゃべりのプロの会話術

急速なテレビ会議の普及に戸惑いを覚える人は少なくない 写真はイメージ =PIXTA
急速なテレビ会議の普及に戸惑いを覚える人は少なくない 写真はイメージ =PIXTA

オンライン形式のテレビ会議が増えて、「会議でのしゃべり方」にも変化が生じつつあるようだ。これまでとは違って、リアルな対面環境ではない分、参加者に響くトーク術が今まで以上に求められるようになってきた。見た目のフラットな画面上でもしっかり主張や提案を印象づける必要に迫られる状況を迎え、「オンライン会議でのしゃべりテクニック」は、どう変わっていくのか。具体的なアドバイスを含めて考えてみたい。

リモートワークが広がり、テレビ会議を使う機会も増えてきた。「我が社は今でもリアル会議中心」という職場もあるだろうが、徐々にテレビ会議が増えていく流れにあるとみえる。ただ、まだ過渡期にあり、慣れない人も多いので、参加者の間にも戸惑いや違和感があるらしい。とりわけ、これまで割と会議を仕切る立場にあったベテランの間では「自分の思い通りに会議を進められない」という焦りやもどかしさを感じる人もいそうだ。

リアル会議の「仕切り屋」だった面々がテレビ会議で立ち回りにくさを感じる理由の一つに、「公平な画面構成」がある。従来のリアル会議では、職場での役職や立場に応じて、着席ポジションが決まり、発言力が「見える化」されている。会議が始まる前から、既に決定権のありかが座席レイアウトの形で、無言のうちに示されているようなしくみで、中堅・若手や弱小部署の発言はあらかじめやんわりと封殺されているともみえる。

しかし、テレビ会議では見た目上、参加者それぞれに画面スペースが均等に割り振られ、上下関係が分かりにくい形式で進められることが多い。機能面でも様々な「制約」がある。音量は一定レベルに調整されていて、仕切り屋がお得意の武器とされる「大きな声」も、参加者を縮み上がらせる効果が薄い。

参加者が細かく分割表示される形式では、どのメンバーも小さなウインドーに映るので、ベテランも若手も見た目の面積は同じ。一座を見渡して、威圧的な態度で存在感を誇示するという、歌舞伎の「見得」のような技も役に立たない。

テレビ会議には「雑談が減る」という傾向もあるそうだ。職場ごとに違うだろうが、本来は議題優先であるはずの会議の席でも、リアル会議の冒頭は雑談が多くなりやすい。だが、リアル会議に比べ、テレビ会議ではスムーズに進行しようという意識が働くせいか、事務的な運びになる傾向が強いという。

茶々を入れたり、議論を混ぜっ返したりするような「脱線」は減り、割とまじめなムードで、淡々と議事が進んでいく(もちろん、常にそうとは限らない)。この直線的でストイックな進め方は、議題とまっすぐ向き合った意見が受け入れられやすい空気を生む。社内の力学バランスや、諸方面との調整能力に強みを持つ「寝業(わざ)師」にとっては、アピールの機会が減り、会議支配力がダウンすることにもつながる。

考えようによっては、表情や音声を伴ってはいても、実質的には文字チャットに近いともいえるだろう。参加者が互いにメッセージを打ち込むテキスト交換形式の場合、感情交流が減って、論理色が濃くなりやすい。知的作業として発言が積み重ねられ、発言者個人の人柄や意見のニュアンスよりも、論旨そのものが重んじられる傾向が強まる。要するに、筋の通ったまっとうな趣旨の発言が相応の評価を得やすくなるわけで、それ自体は歓迎していいだろう。

テレビ会議の持つこれらの特質は総じていえば、必ずしも悪いことではなさそうだ。これまで重鎮や上司の顔色を気にして、発言を手控えていた中堅・若手が伸び伸びと意見を言えるようになるのは、会議の多様性という面でも、貴重な視点を取り込む意味からも望ましいだろう。老練な仕切り屋や寝業師が過剰に幅を利かせるのは、イノベーティブな議論を盛り上げるうえでは、邪魔になることが多かった。テレビ会議の普及は「会議の民主化」に一役買っているともみえる。

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