あえて違和感やずれを引き起こす言葉を選ぶ

「マネタイズ」「ソリューション」「クライアント」といった、今風の横文字ワードが飛び交う会議であれば、わざと古めかしい漢語やくどめの言い回しを選ぶのも一案だ。スマートな言葉遣いに慣れたその他大勢に埋もれてしまうのを避ける効果が期待できる。

たとえば、「マネタイズ」を「金もうけ」や「商売」と置き換えるだけでも、きれいごとのトーンを抜け出せるだろう。「いったい、誰がその銭(ぜに)をはろうてくれると考えてるんですか」と、ややねちっこく語れば、生々しい熱意が伝わりそうだ。うわついたマーケティングにおもねらない、骨太な稼ぎ人マインドも醸し出せる。実力派の経営者にも、議論にリアル感を加えるねらいから、こうした生々しい問いかけを好む人がいるという。

洗練されたトークでは敬遠されがちな「濃いめ」の言い回しは発言にニュアンスを添えてくれる。同時に、発言者のキャラクターを際立たせ、フラットな画面のテレビ会議でも、存在感を高める効果を発揮する。少しださめの物言いも、洗練トーク派をたじろがせる武器になり得る。粗野感や幼さを感じさせないさじ加減を工夫する必要はあるが、「飛び道具」として使う手はある。

たとえば、同じことをもう1度言うのも議論の流れを変えるテクニックの一つだ。通常、「繰り返しは時間の無駄」と思われがちだ。しかし、あえてそのルールをひっくり返して、「いいですか、もういっぺん言いますよ」と前置きして、前の主張を繰り返すと、発言者の熱意が乗っかったメッセージに変わる。先の発言を肯定しない流れに、発言者が強い抵抗を示したと受け取られ、主張を織り込んだ軌道修正に向かいやすくなるだろう。リアル会議で使えた小技だが、テレビ会議でも転用が利くはずだ。

無言の使い方やテンポの操り方などを総合的に意味する「間(ま)」は、しゃべりの最強ツールといえる。同じテンポで切れ目なく話すと、耳から伝わるリズムのせいで、内容まで薄っぺらに聞こえがちだ。映画や特撮番組で描かれた、ロボットがマシンボイスで発声する場面を思い浮かべてもらえれば分かりやすいだろう。説得力が弱く、共感を得にくい。いわゆる「棒読み」だ。

しかし、適度に沈黙(無発声部分)をまじえながら、不ぞろいのテンポでしゃべると、人間くささや味わいが増す。上手に間を操れば、聞きやすさがアップするうえ、聞き手が自然と引き込まれやすくもなる。間はしゃべりの「王様」なのだ。

提案や意見をとにかく短時間で効率よく伝えようと力んでしまうと、かえってテンポが平たんになって、貴重な間が失われる。魅力的なしゃべり方をする人の多くは、ゆったりと自分のペースで言葉を発していく。しかも時折、沈黙を織り交ぜながら。意見ばかりを並べないで、類似事例や体験談、たとえ話などの「寄り道」にも誘いつつ、聞き手を巻き込んでいく。

そこまでのレベルをいきなり目指すには及ばないが、「とにかくみんなの時間を無駄にしないよう、効率的に話を進めないと」という気負いはむしろ逆効果になりやすい。

リモートワークやテレビ会議は生産性を高めるという期待も帯びているようだが、しゃべりに過剰な生産性期待を持ち込むのは、かえって段取り優先の進行に陥りかねない危うさをはらむ。多くの人が考えと言葉を持ち寄るのだから、会議もまたコミュニケーションの場だということは、テレビ会議がさらに進化しても、忘れないほうがよい気がする。

※「梶原しげるの「しゃべりテク」は毎月第2、4木曜掲載です。次回は2020年5月14日の予定です。

梶原しげる
 1950年生まれ。早稲田大学卒業後、文化放送のアナウンサーに。92年からフリー。司会業を中心に活躍中。東京成徳大学客員教授(心理学修士)。「日本語検定」審議委員。著書に「すべらない敬語」「まずは『ドジな話』をしなさい」など。

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