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中国人民銀行はデジタル人民元を発行する意向を示している(北京市内の中国人民銀行本店)

中国人民銀行はデジタル人民元を発行する意向を示している(北京市内の中国人民銀行本店)

各国の中央銀行がデジタル通貨について研究していると聞いたわ。そもそもどんな通貨で、使い勝手はどうなのかな。将来には紙幣や硬貨はなくなってしまうのかな。

中央銀行のデジタル通貨構想について、河野美香さんと飯塚三枝子さんに、西村博之編集委員が解説した。

――そもそもデジタル通貨とはどんなもの?

中央銀行がお札などではなく、デジタル(電子情報)の形で発行するお金です。個人がスマホなどに取り込んだ電子財布を使い、現金と同じように買い物をしたり送金したりできるようになります。すでに存在するJR東日本のSuicaなどの電子マネーと機能はそう変わりませんが、発行主体が民間でなく中央銀行という点がポイントです。

中銀デジタル通貨の研究が加速したきっかけは、2019年6月の暗号資産「リブラ」の発行構想です。世界に20億人超の利用者がいる米フェイスブックが主導する構想であるだけに、「リブラが法定通貨を乗っ取るのでは」との懸念が浮上し、中銀が対抗策として自前のデジタル通貨の発行を視野に入れ始めました。

国際決済銀行(BIS)の調査では、世界の中銀の8割強がデジタル通貨を研究しており、「6年以内に発行する可能性がある」とする中銀は全体の4割近くに達します。

――デジタル中銀通貨はいつごろ登場しそう?

身軽な小国はすでに動いています。カンボジア国立銀行は19年、「バコン」を試験的に発行しました。エクアドルも14~17年に官製デジタル通貨を発行していました。マーシャル諸島共和国やバハマの中銀も近くデジタル通貨を発行する計画です。

経済規模が大きな国では、中国人民銀行が年内にもデジタル人民元を発行する意向を示しています。先進国ではスウェーデンの中銀が先行して実験を進めています。

一方、米国や日本は人々が現金を好む傾向があり、仮に中銀デジタル通貨が発行されても普及は緩やかになりそうです。高齢者などを中心に物理的な紙幣を好む人々はなお多く、目先現金がなくなる状況は考えにくそうです。

――日々の生活にはどんな影響が出そう?

発行主体が民間でも中銀でも、デジタル通貨の最大の強みはその利便性です。店頭やネット上などどこでも手軽に支払いができ、安価な手数料でスピーディーに送金もできます。民間と中銀の違いがあるとすれば、安全性でしょう。中央銀行が破綻する可能性は民間に比べはるかに低いので利用者にとって安心です。

ただ、その安全性ゆえに民間のデジタル通貨、あるいは銀行預金から資金がシフトする可能性も指摘されます。銀行預金からお金が大量に流出すれば銀行の経営が打撃を受け、金融システムの正常な機能を妨げかねません。

また中銀デジタル通貨は設計次第で、取引データなどの個人情報を中銀に集めることが可能です。脱税や犯罪絡みの取引をあぶり出しやすくなる半面、プライバシーをどう守るかが課題になります。

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