依存症治療の医師が解説 「最凶」スマホの問題点『スマホ依存から脳を守る』

4月から、香川県で「ネット・ゲーム依存症対策条例」が施行された。18歳未満の子どもに対し、ゲームとスマホの利用時間を規制するよう保護者に求めるものだ。この条例は賛否を呼び、中には「やりすぎだ」という反発の声も上がったそうだ。

規制はやりすぎなのか。本書『スマホ依存から脳を守る』を読めば、「そうとも言えない」と思えてくる。アルコールやインターネットへの依存症治療を引き受ける久里浜医療センターで精神科医長を務める中山秀紀氏が、スマホは最強(凶)の「依存物」であると指摘。現場の知見をもとに、スマホ依存に陥るメカニズムや依存症の実態、回復までのプロセスなどを解説している。

不快感が依存をもたらす

著者いわく、依存とは「正の強化」「負の強化」という2つの側面で説明できる。スマホでオンラインゲームやインターネットコンテンツにのめり込むとき、わくわくしたりリフレッシュしたり、使用者は何らかの「快楽」を得ている。快楽を得られるからスマホを使う、これが正の強化だ。この段階では依存症ではない。

だが、「スマホを使っていないとき」にイライラしたり空虚感や不安感を抱くようになると危ない。そうした不快感から逃れようとさらにスマホを使ってしまう。これが負の強化だ。スマホを使えば快楽が得られるはずなのに、使用者の脳内は同時に「使わない時の不快」が増している。やがて、楽しむために使うのではなく、不快だから使う、という風に目的がすり替わってしまうのだ。これが依存の始まりである。

スマホ使用に規制を

依存症が重症化すると、どうなるか。精神状態が悪化し、うつや引きこもりになる。昼夜が逆転し、遅刻や欠席が増え、学校や会社へ行けなくなる。東北大学と仙台市が行った調査では、スマホの使用時間が長い子どもほど、テストの成績が低下するという結果が報告されているという。

著者が問題視するのは、このような依存物であるスマホが野放しであることだ。手に入りやすく、インターネットに接続すれば24時間無制限に楽しめる。他の依存物(アルコールや覚せい剤など)のような罰則のある法律がない。最近では、スマホやタブレットを授業に使う学校もある。社会全体がスマホの危険性に、あまりにも無頓着であることへの危機感が、本書にはあふれている。

長年依存症患者を診続けてきた医師として、依存症は決して「本人の責任」だけではないと訴えていることにも注目だ。たしかに最近、ゲームやスマホのCMは増えてきたが、依存症への危険性に触れたものは見たことがない。楽しさ、面白さをアピールする一方で、スマホが依存物の特徴を備えていることを、説明する必要性も議論されるようになるだろう。

スマホに規制は必要か、否か。本書を読んでじっくり考えてみたい。

今回の評者 = 安藤奈々
情報工場エディター。8万人超のビジネスパーソンに良質な「ひらめき」を提供する書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」編集部のエディター。早大卒。

スマホ依存から脳を守る

著者 : 中山 秀紀
出版 : 朝日新聞出版
価格 : ¥869 (税込み)

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