関連イベントの来場者数が急増するなど、アナログなボードゲームの人気が高まっている。それに伴い「ボードゲームカフェ」という、ボードゲームが楽しめるスペースも増加中。一体どんな店なのだろうか。そのビジネスと人気の秘密を探った。

20~30代の若者がボードゲームで盛り上がる「JELLY JELLY CAFE」の店内
20~30代の若者がボードゲームで盛り上がる「JELLY JELLY CAFE」の店内

高まるボードゲーム人気、2016年に分岐点

 2019年11月に東京ビッグサイトで開催された「ゲームマーケット2019秋」というボードゲームのイベントに、2日間で2万9300人が来場した。このイベントは2000年から行われており、初めて東京ビッグサイトで開催された13年の来場者数は5000人だった。それがわずか6年で、来場者は約6倍に急増した。

 ボードゲームの人気に伴い、ボードゲームカフェも増えてきている。ボードゲームができる広いテーブルと、平均500~600種類ものボードゲームが用意されており、入場料を払えば自由に遊ぶことができる。主な客層は20~30代の男女だ。

 ボードゲーム専門の情報サイト「ボドゲーマ」によると、15年は国内でボードゲームの提供を開始した店舗は累計47店舗だったが、その後堅調に伸び続け、19年には累計387店舗にまで増えた(現在閉店している店舗を含む)。ボドゲーマを運営するオーバードライブ代表取締役の若狭創氏は、ボードゲームカフェの伸びは16年がターニングポイントだったとみる。

 「16年は複数のボードゲームカフェが続けざまに2号店出店を決めた年。それ以前は1店舗経営の会社しかなく、成功事例がないので失敗する可能性だけが示唆されていた。国内ボードゲーム業界は小さな市場なので『海外のボードゲームカフェのように集客ができず、経営が維持できない』というのがこの業態に対する定説だった。それが16年を境に多店舗展開に転じたということは、ビジネスとして成立していることを裏付ける状況証拠といえる」(若狭氏)

 さらに若狭氏はボードゲームカフェのビジネスについてこう述べる。

 「ボードゲームカフェの開業・運営は、コストが大して掛からないのが特徴。ボードゲームは元々オーナーの私物であることも多く、カフェ用に新しく買っても数十万円程度でボードゲームカフェとして成立する。ランニングコストも圧倒的に安い。主な費用は光熱費と地代家賃くらいで、カフェの場合はちょっとした材料費が発生する程度。新しいボードゲームを買っても月に数万円程度で、何十回でも利用できる」

 それほど多額の投資が必要なわけでも、在庫リスクを抱えるわけでもない。「大きな売り上げを必要とせず、もし厳しいときは撤退もしやすい。そのため事業計画が作りやすいという参入障壁の低さが、ボードゲームカフェ増加の大きな理由だろう」(若狭氏)。

「食べ物持ち込み可」でももうかる

 ボードゲームカフェのブームをけん引してきたのが、ピチカートデザイン(東京・豊島)が運営する「JELLY JELLY CAFE」だ。11年9月、渋谷に1号店をオープンしたのを皮切りに、今では東京の他、横浜、川崎、大阪、名古屋、福岡など、全国13店舗を展開している。年間の来店客数は14万人にも上る。

 JELLY JELLY CAFEを訪れてまず驚くのが、「出入り自由」「食べ物持ち込み可」になっている点。一般に飲食店なら回転率は高いほうがいい。しかしJELLY JELLY CAFEはそうではないらしい。

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