子供たちの「遠回り」 見守るだけの私野球評論家 工藤公康

私は厳しくしつけられて育ちました。食事をするときは正座でしたし、おはしの持ち方が少しおかしくても怒られました。5人兄弟の4番目で、小さいころは新しい服を買ってもらった記憶がありません。そのころ、子供心ながらに誓ったことがあります。「大人になって息子や娘が生まれたら、全員に分けへだてなく物を買ってあげられるような大人になろう」と。

「厳しさこそが大切」という考え方が、子供を持ってみて変わった

今は2男3女に恵まれ、一番下の息子を除いた4人が高校を卒業しました。彼ら、彼女らの成長を見守ることができている今、心からの生きがいを感じています。

ただ、子育ては本当に難しい。それが実感です。成長するにしたがい子供なりの悩みや葛藤が出てきます。もちろん、私自身にもあったことで、親に相談できない悩み事もありました。

年ごろになれば友達との関係の方が大事に思えるもので、わずかなきっかけで道を外す危険性もあれば、逆に夢や目標を強く持って頑張れるようにもなります。

厳しさこそが大切。21年前、初めて長男の阿須加(あすか)を授かった時はそう思っていました。親からされたしつけを、そのまま子供にすることが「教育」。

それがあまりに一方的な押しつけであることに気付いたのは、3番目の子供である次女が4歳になったころでした。私は親からたたかれることで、悪いことは何かを教えられました。

それと同じことを次女にした時、急に心が痛くなったのです。泣きじゃくる娘を前に、これほど愛している子なのに、私は手をあげている。反省と後悔の思いがいっときに胸に流れ込んできました。なぜ私はたたいてしまったのか……。

私がプロ野球選手だったせいか、息子、娘たちも小さいころからスポーツをしています。今、プロの選手になっているのは、20歳になるゴルファーの長女・遥加(はるか)だけです。彼女がまだ小学生のころは、1年の半分も自宅に戻れず、会話の時間さえ十分に取れない状態でした。

それでもオフシーズンになって私がゴルフの練習に行くと遥加がついてきてくれました。別に大した会話をしたわけではありません。ただ、遥加は自然にゴルフがうまくなり、今、厳しい世界で自分を磨いています。彼女にも、私と同じような苦悩がこれからたくさんあるでしょう。どうか自分のことを信じて進んでいってほしい。そう願うばかりです。