――どんな実例が登場していますか。

人気の高い歌手のコンサートで、チケット販売に取り入れられるようになりました。販売期間や席のエリアをいくつかに区切り、売れ行きに応じて価格を変えるのです。時間単位で利用する駐車場では、需要や競合施設の価格などに応じて料金を変える例が表れています。以前はスタッフが近隣で競合する駐車場を訪れて価格動向を調べて定期的に価格を変更していましたが、今はネット上で地域の相場を調べるそうです。

家電量販店では、ネットの通販サイトの動向に合わせて価格を変えていく企業が増えました。商品の前に掲示する値札も紙にシールやペンで表示するのではなく、電子表示のものを備え、機動的に変更しています。

米国では高速道路の有料レーンについて、渋滞の度合いに応じ区間ごとに料金を変える例が登場しました。混んでいる区間の料金を高くすることで渋滞が減ったそうです。日本でも一般家庭を対象に、暑くなりそうな日はピーク時の電力料金を上げる実験が行われたことがあります。電力消費量の伸びを抑える効果があったそうです。

――普及することでの問題点はありませんか。

米国で3年前、大手通販サイトが台風の襲来前にボトル水などの値段を引き上げ、社会的な非難を浴びる出来事がありました。需要急増の兆しをとらえたAIの自動値付けだったそうです。AIもまだ完全ではありません。

また消費者は、知識の乏しい分野の買い物では、価格から価値を推測することも多いはずです。短期間での極端な価格の上下は買い手の混乱や不信感を呼びます。商品やブランドの価値を損なう危険にも注意が必要です。

ちょっとウンチク

消費者心理 読み違いも

人気の高い興行チケットなら極端な価格高騰も認められるか。米国の例だとスポーツの試合ならOK。勝者が財力を持ち、「いい思い」をすることを受け入れる文化がファンにある。逆に大衆音楽ではNG。客席全体の一体感がライブの魅力でもあるからです。

人間の心理は必ずしも合理的ではありません。ブランド品やエンターテインメントは、非合理的な価値に価格を払っている側面があります。AIが合理性だけで最適価格を算出するのであれば、実用的な分野なら及第点でも、場合によっては企業にマイナスをもたらす値付けをしてしまうかもしれません。(編集委員 石鍋仁美)

■今回のニッキィ
宇都木 香織さん 結婚相談所カウンセラー。会社勤めの傍ら、大学に編入し社会福祉を学んできた。3月の卒業式を楽しみにしていたが、「新型コロナウイルス問題で中止になりました」。
菅原 直美さん 駐車場管理会社勤務。10代のころから献血をやっている。普段から野菜や雑穀類の多い食事を心がけ、健康管理にも余念がない。秘訣は「よく寝てストレスをためないことです」。

[日本経済新聞夕刊 2020年3月16日付]

「ニッキィの大疑問」は原則月曜掲載です。

ビジネス書などの書評を紹介
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら