ナイキのDX(デジタル・トラスフォーメーション)の象徴とも言うべき、スマートフォン・アプリ「SNKRS」によるシューズ販売。単にアプリを作るだけでなく、さまざまな属性の顧客のトレンドを知り、製品開発にフィードバックする、まさにD2Cの中核的な役割を果たしている。そのキーマンを米ニューヨークのデジタル開発拠点「S23NYC」で直撃した。
ニューヨーク・マンハッタン、ブルックリン橋を臨むリバーサイド。再開発エリアのビルに2019年末、ナイキのデジタル開発部隊「S23NYC」が拠点を構えた。
率いるのがS23NYCのGMであり、ナイキのシューズ販売アプリ「SNKRS」のグローバルGMであるロン・ファリス氏である。いわばナイキが消費者と直接コミュニケーションし、販売するD2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)の責任者である。
S23にはアプリ開発者だけでなく、データサイエンティスト、マーケティング、デザイナーなど、さまざまな職種のメンバーがそろっている。シューズだけでなく、アパレルのデザイン部隊もいる。D2Cのスタートアップのようにデータで計測して、マーケティング施策はもちろん、製品のコンセプトまで生かすループを構築したのだ。
買収で獲得したミレニアル・マーケの専門家
実はファリス氏は2016年にナイキが英ヴァージングループから買収したソーシャルマーケティングテクノロジー会社、ヴァージン・メガの創立者兼CEO(最高経営責任者)だった。ヴァージン・メガはミレニアル世代のコミュニティーに対してソーシャルメディアを用いた新しいコミュニケーションやマーケティングを行う会社である。
ファリス氏が得意とするのが、従来手法では難しいネットやソーシャルで情報を取得するミレニアル世代へのマーケティングだ。その手法を、ナイキの熱狂的なファンやコミュニティーを見いだすことに活用していった。コレクターのクローゼットを見せてもらいに行くこともあるという。「我々は今、ナイキの顧客が何が好きかを理解したうえで、シューズやアパレルを作り売ることができている」(ファリス氏)
ナイキの「コミュニティー」を知り働きかける
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