コンビニに時短の波 ワンオペで「温かみ」を売る未来『コンビニが日本から消えたなら』

先日、客先に書類を届けに出かけたが、肝心の書類を忘れたことに到着してから気づいた。そこで、スマートフォン経由でコンビニのコピー機から出力し、事なきを得た。つくづくコンビニは頼りになる。

コンビニはいまや私たちの生活から切り離せない存在だ。だからこそ、様々な社会課題と無関係ではない。むしろ最前線にいると言ってもいいのかもしれない。

それを教えてくれるのが本書『コンビニが日本から消えたなら』だ。長時間労働や人手不足、軽減税率や食品ロスといった課題に対し、コンビニ各社がどのように取り組んでいるかを舞台裏を含めリポートしている。著者は流通アナリストの渡辺広明氏。ローソンで店長、スーパーバイザー、バイヤーを務め、長年現場に携わってきた。

広がる時短や元日休業

コンビニといえば大きな話題となったのが「24時間営業の是非」だ。セブン‐イレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソンの大手3社が、時短営業や元日休業を打ち出したのは記憶に新しい。

本書によると背景にはコンビニオーナーたちの不満の高まりがある。競合店の増加、人手不足からアルバイトの人件費が膨らんだことなどから、店舗ごとの収益は年々減少している。収益を上げるためにはオーナー自身が深夜まで過重労働を続けるしかない。その一方で、店舗数の増加によって業界全体の売り上げ、つまり本部の収益は年々伸びていたのだ。

営業販売権を委託するフランチャイズ契約では、親企業、つまり本部の立場が強くなる。だが、不満を募らせた一部のオーナーは時短営業を強行し世間の注目を集めた。これをきっかけに、本部とオーナーが話し合う機会が増えたという。双方の歩み寄りは、かなり画期的なことだったそうだ。

AIで進める究極の省力営業

時短営業と並行して、コンビニは「ワンオペ体制の構築」が大事だと著者は説く。ワンオペとは「ワンマン・オペレーション」、つまり従業員1人でも回せる体制ということだ。悪い意味で使われる場合が多いが、著者は「人の作業を減らしていく」ことを意図している。

ワンオペ体制には人工知能(AI)発注やセルフレジなどAIとIoT(モノのインターネット化)の活用が外せない。すでにセブン‐イレブン・ジャパンはNECと、ファミリーマートはパナソニックと、これらを取り入れた実証実験を始めている。

省人化を進めれば、ていねいで温かみのある「接客」が改めて価値を持つようになるという。例えば著者は、単身高齢者が店員と気軽にコミュニケーションできる場としての機能を挙げている。なるほど、私のように仕事の用だけ済ませたい者にはワーキングスペースであり、会話を求めるシニア層にとっては憩いの場になりうる。コンビニの使い勝手は広がってゆくのだ。

時代のニーズに最先端で応えてきたコンビニは、いまも変化の真っただ中にいる。本書でコンビニの動向を知っておくことは、自身の仕事にも大きなヒントとなるだろう。

今回の評者=安達貴仁
情報工場エディター。主にDTP組版、ときどきカメラマンの傍ら、書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」エディティング・チームでも活動。東京都出身。

コンビニが日本から消えたなら

著者 : 渡辺広明
出版 : ベストセラーズ
価格 : 1,650円 (税込み)