丼で舌鼓うつ、お取り寄せ海の幸 ベスト10
豊かな海の幸をぜいたくに味わえる魚介丼。かつては漁港や市場などを訪れたときにしか楽しめない、地元ならではの味だった。だが最近は冷凍加工技術が発達し、各地の味を自宅で手軽に再現できるものが増えてきている。水産食品に詳しい専門家に磯の香り漂う丼を評価してもらった。
四国の西南端、足摺沖でとれたばかりのサバに、甘辛いタレを合わせたサバの漬け丼。黒潮の荒波にもまれ、身の締まったサバを伝統の立縄漁で1尾ずつ丁寧に釣り上げ、工房に運び込んだ後遅くとも6時間以内に水洗いして刺し身にし、タレと合わせて凍結する。
サバの身は非常に柔らかく、甘口のしょうゆで作られたタレと相まって他の丼にはない独特の風味と食感が楽しめる。ご飯に載せるだけでなく、だしをかけてもおいしい。サバはごく新鮮でなければ刺し身にできず、かつては産地近く以外ではなかなか食べられなかった。瞬間冷凍させる技術が進み、家で手軽に漁港の風情を楽しめるようになった。
「鮮度が抜群、サバの身は薄切りで食べやすく、タレの味もちょうどいい」(白田典子さん)、「ご飯に合うのはもちろんだが、パスタや刻んだ青しそといためてもおいしそう」(野永喜三夫さん)(1)4000円(1人前を5パック、北海道・沖縄・一部離島を除いた地域への送料込み)(2)0880・83・4100
バラエティー豊かな海の幸5種をぜいたくに集めた一品。刻んだメカブがつなぎとなって、柔らかいホタテやエビ、ホッキ貝などの具材の味を引き立てながら、まとまりのある味わいにしている。タレに漬け込んだイクラがプチプチと口の中ではじけていいアクセントになる。
多数の具材が入っているが、それぞれの味はバランスがよい。解凍して温かいご飯にかけるだけで、貫禄も感じる本格派の海鮮丼になるのがうれしい。「一つ一つの素材が柔らかく、食べやすい」(樋口武久さん)、「ストレートにおいしい。具だくさん」(大野和夫さん)(1)630円(1人前)(2)0120・000・784(岩手県産・通販係)
ふっくらと焼き上げられた日本海産の穴子が口でとろける。その骨と頭部を煮詰めて作ったエキスを含んだタレにはうまみが凝縮され、コクのある味わいだ。
蒸気をさらに加熱した高温の過熱蒸気を噴射して、ガスに比べて短時間に焼き上げるため、身が柔らかくジューシー。食べる直前に電子レンジで解凍し、熱々のご飯に載せて食べたい。生活協同組合(生協)や島根県物産協会などで販売している。取り寄せ品はタレなどは付かず商品名が「蒲(かば)丸」と異なるが、同じ焼成方法で仕上げている。「穴子の身もふっくら、タレもおいしい。そのままご飯にかけても、お茶をかけても楽しめる」(石神修さん)、「地元、日本海産の穴子が使われており、味・食感ともによい」(中沢さかなさん)(1)800円(2人前)(2)0855・22・8001
透き通るピンク色が鮮やかなビンチョウマグロに、タコ、ホタテ、イクラ、メカブが入る。新鮮な素材の良さを際立たせるように薄味で仕上げた。
全体にさっぱりした爽やかな味わい。ご飯以外に、冷たいうどんや冷ややっこにかけて食べてもおいしい。「自然な味付けに好感がもてる。味の主張が強すぎないから、食べ飽きない」(大野真人さん)、「食べ慣れた味で安心感がある」(川野真理子さん)(1)630円(1人前)(2)0120・251・761
地元の能登でとれたモズク、甘エビ、タコ、イカ、カレイやスズキなどの白身魚をぜいたくに使う。これらに北海道産のイクラを加えて、しょうゆ、酒、みりんで味つけした。海鮮丼としては珍しく、小松菜が具に取り入れられている。これが魚介類のなかで、味・食感ともによいアクセントとなっている。「小松菜を取り込む目の付け所がよい。地方性も感じる」(中村新さん)(1)680円(1人前)(2)0768・52・2114
昔ながらの漁師めしを再現した。天草の荒波でもまれたタイは、解凍しても身の崩れがない。しょうゆとみりんを使った特製ダレで漬け込んでおり、香ばしいゴマの風味が鼻をくすぐる。最初は漬け丼で、その後にお茶漬けにして2度楽しむ食べ方がお薦めだ。「上品な味わい。ゴマの香りもいい感じ」(石川昭子さん)(1)420円(1人前)(2)0120・993・785
柔らかく煮上げたアワビ、若芽のうちに刈りとったメカブ、はじける食感のシシャモの卵、とれたてのイクラを独自の調味液に漬け込んだ。具材のうまみと、しっかりした歯応えが印象的で、盛りつけた時の華やかさも抜群だ。「柔らかなアワビ、シシャモの卵など色々な食感が楽しめて美味だ」(渋谷耕一さん)(1)3500円(3~4人前)(2)0120・567・070
脂ののったキングサーモンと香ばしく照り焼きにしたホタテ、あっさりした特製白じょうゆに漬けたイクラの3つの海の幸をたっぷり盛り込んだ。インターネット通販限定で不定期に販売なので、休止になる時期もある。「具のボリューム感があり、一つ一つの味もしっかり出ている。値段以上の価値あり」(北野旨伸さん)(1)987円(1人前)(2)0120・005・050
地元でとれる鱧(はも)にタレと薬味、締めのお茶漬け用のだし汁のセット。取り寄せ品は7月中旬ごろ発売予定。(1)800円前後(1人前、予定)(2)0894・27・0023
旬の時期の北海道産の鮭とイクラを特製のしょうゆタレに漬け込んだ。とろりとした独特の食感とうまみがある。(1)770円(2人前)(2)0120・310・041
表の見方 数字は選者の評価を換算。カッコ内は製造企業名、製造企業の所在地。(1)税込み本体価格の主な例、送料別。ただし1位のみ送料込み(2)問い合わせ先は表記がない場合は製造企業。9位は完成形を試食、量産体制が整わず販売は7月になった。白飯や卵、薬味などは商品に含まれない。
冷凍技術進み、食感そのまま
ベスト10に入った商品の大半は冷凍もの。魚介類を刺し身にしたり、焼いたりした後すぐに急速に冷凍することで細胞が壊れるのを避けて、風味や食感を保ち、現地での出来たてと遜色のないレベルの商品も増えつつある。
魚食文化の普及に努める中沢さかな氏は「ここ10年は冷凍技術の進歩で商品品質は確実に上がっている」と話す。急速冷凍する技術を地方中小企業も導入し始め、かつては「知る人ぞ知る」名物が全国に簡単に流通できるようになってきた。
今回は丼の素として、白飯に載せて審査した。白飯に限らず、酢飯を使ってすしにしたり、そばやうどんに載せたりしてもおいしい。冷ややっこに合わせるなど、アレンジ方法は無数にある。
夏本番はもうすぐ。家庭で好きな魚介丼に舌鼓を打ちつつ、雄大な海原や風情ある漁師町に思いをはせれば、食卓の会話も弾みそうだ。
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調査の方法 魚介丼に詳しい専門家14人に、取り寄せできるか、都内などで購入できる商品を対象に推薦を募り、リストを作成した。推薦の多かった20品を12人の専門家に試食してもらい、味や価格と品質のバランス、地域色の豊かさなどを勘案して順位をつけてもらった。試食できなかった2人の評価も、一部加味した。選者は以下の通り(敬称略、五十音順)
石川昭子(料理研究家)▽石神修(東京食文化創研舎主宰)▽大野和夫(大寿社長)▽大野真人(三越伊勢丹食品第一商品部元階催事バイヤー)▽川野真理子(日本全国うまいもの交流サロンなみへいオーナー)▽北野旨伸(大丸松坂屋百貨店フーズ統括部バイヤー)▽篠崎剛(高島屋食料品・食堂ディビジョンセントラルバイヤー)▽渋谷耕一(リッキービジネスソリューション社長)▽中沢さかな(水産庁長官任命お魚かたりべ)▽中野幸浩(中野ユキヒロ商店)▽中村新(産業フードプロデューサー)▽野永喜三夫(日本橋ゆかり料理長)▽白田典子(良品工房社長)▽樋口武久(テイク・アソシエ社長)
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