EU離脱で英国どうなる? 米・アジアと自由貿易探る

英国がEUを離脱し、気勢を上げる人たち(2020年1月31日、ロンドン)
英国がEUを離脱し、気勢を上げる人たち(2020年1月31日、ロンドン)

英国が欧州連合(EU)を離脱したけれど、なぜ国民投票から3年半あまりもかかったのかな?そもそもEUを離脱したのはなぜ?英国は貿易や投資の自由化をどう考えているの?ブレグジット(英国のEU離脱)について高橋ゆかりさんと山地瑞紀さんがロンドン駐在経験がある大林尚編集委員に話を聞いた。

――英国はなぜEUを離脱したのですか?

1月末、英国はEUから正式離脱しました。当の英国人も驚いた離脱決定は今から4年近く前、2016年6月の国民投票でした。投票前、離脱派が勝つわけがないと世界中の人が考えていましたが、投票日が近づくにつれ、もしや離脱票が上回るのではないかと思うようになりました。

現首相で離脱派のリーダーであるジョンソン氏が掲げたのは「移民制限」と「主権奪還」です。投票時に有権者が何を重視したか、調査結果をみると残留派は「経済」、離脱派は「移民」でした。

EU市民は域内どこにでも住んで働けます。04年からの東方拡大を契機に、相対的に経済発展が遅れた東欧の若者らが大挙してロンドンなどに押し寄せ、主にサービス業に従事しました。東欧の通貨に対して相場が高い英ポンドで得る収入は大きな魅力。「仕事が奪われる」という移民への反感は、保守的な地方都市でとくに強かったのです。

離脱後の移民政策についてジョンソン首相は語学力などでポイント制を導入し、英国に役立つ移民だけを受け入れる方針です。

英米と欧州大陸とでは法体系が違います。ざっくり言うと大陸法はあらかじめ規制の網をかけ、英米法は原則を共有したうえで規制を少なくする考え方です。実情はともかくスーパー店頭の果物の形状やレストランでのグラスワインの量まで細かく規制するEU法には従いたくないという英国人は少なくありません。

――離脱まで、なぜ3年半あまりもかかったのですか?

国民投票を受けて辞めたキャメロン首相を継いだのは、英政治史上2人目の女性首相メイ氏でした。国民投票までは残留派でしたが「有権者が選んだ以上、英国にとってよい形で離脱する」という政治目標を定めました。もっとも総選挙に勝利して勝ち取った首相の座ではないという弱みを抱えていました。

メイ政権は18年秋、EU執行部と離脱条件の合意に至りました。最後までもめたのはアイルランド国境問題でした。同国はEU加盟国。英国の一部である北アイルランドとの間には国境審査がありません。これを厳格な国境にするかどうかが焦点でした。

合意では、目に見える国境は設けず問題解決するまでは「EUの関税ルールに従う」としました。これが実質的に残留と変わらないと、身内である保守党内の離脱派議員に反発されたのです。

メイ氏の後を襲ったジョンソン首相は昨年10月、北アイルランドを含む英国が名実ともにEUから離脱することでEU側と合意し直しました。細かくみると抜け穴もありますが、アイルランド島内に国境を設ける形です

実は、英領ジブラルタルにも英国とスペインの陸続きの国境があります。国境問題が浮上するかもしれませんね。

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