シャープは2020年2月17日、次世代モバイル通信規格「5G」に対応したスマートフォン「AQUOS R5G」と、同じく5Gに対応した「モバイルルーター」の2機種を発表した。国内初となる5G端末を投入するシャープの狙いを探った。

シャープは2020年2月17日に新製品発表会を開催。20年3月に開始する予定の「5G」に対応した2機種を発表した
シャープは2020年2月17日に新製品発表会を開催。20年3月に開始する予定の「5G」に対応した2機種を発表した

2021年度中には全スマホを5G対応に

 2020年3月より国内携帯電話各社は5Gの商用サービスを提供する予定だ。それに先んじて、シャープは新製品発表会を開催。そこで発表したのが5Gに対応した2つの新端末だ。

 19年もAndroidスマートフォンで国内シェアトップを記録したシャープだが、実は以前から通信技術の開発にも力を入れている企業の1社だ。実際、5G関連の技術特許で世界トップ10に入る数を保有している。

 そうした背景もあり、5Gの国内商用サービスの開始に合わせ、同社はこれまで注力してきた「8K」と、AIとIoTを組み合わせた「AIoT」に、5Gを掛け合わせて世界を変える取り組みを加速したいと考えている。そこで同社が目指しているのが、8Kによるクリエイティブな活動を誰でも簡単に体験できるようにすることだ。

 現在8Kの映像を撮影・編集・配信できるのは、機材の問題からプロに限られている。シャープとしては8K映像を瞬時にアップロードできるほどの高速通信が可能な5Gを活用することで、多くの人が8K映像を簡単に共有できるエコシステムの構築を狙っている。

シャープでは5Gの活用で、8K映像をプロだけでなく一般消費者が手軽に利用できるエコシステムを構築したいと考えている
シャープでは5Gの活用で、8K映像をプロだけでなく一般消費者が手軽に利用できるエコシステムを構築したいと考えている

 その実現に向けて発表されたのが、5Gに対応したスマートフォンのフラッグシップモデル「AQUOS R5G」と、同じく5Gに対応した「モバイルルーター」の2機種だ。シャープはこの2機種を皮切りに5G端末の投入を加速し、21年度中には全AQUOSブランドのスマートフォンを5G対応にする計画だ。

シャープは21年度中にAQUOSブランドのスマートフォン全機種を5G対応にすると宣言
シャープは21年度中にAQUOSブランドのスマートフォン全機種を5G対応にすると宣言

5Gでの8K活用に注力した「AQUOS R5G」

 AQUOS R5Gはシャープのフラッグシップモデル「AQUOS R」シリーズの最新モデル。クアルコムのハイエンド向けチップセット「Snapdragon 865」を搭載するなど、非常に高い性能を備えた5Gスマートフォンだ。

シャープ初の5G対応スマートフォン「AQUOS R5G」。フラッグシップモデルならではの高い性能に加え、4つのカメラを搭載しているのが特徴
シャープ初の5G対応スマートフォン「AQUOS R5G」。フラッグシップモデルならではの高い性能に加え、4つのカメラを搭載しているのが特徴

 AQUOS Rシリーズはこれまで動画と写真を同時に撮影できる「AIライブシャッター」や、撮影と同時に自動で動画のいいシーンを抜き出し、ダイジェストとしてまとめる「AIライブストーリー」など、動画を手軽に活用できるようにする機能に力を注いできた。これは5Gによって動画コミュニケーションが加速することを想定していたからだという。

 今回のAQUOS R5Gでも、5Gの高速大容量通信を生かした撮影体験を提供するため、カメラ機能を大幅に強化した。具体的には1200万画素の望遠カメラと4800万画素の超広角カメラ、1200万画素でF値1.7の広角カメラに加え、リアルなAR(拡張現実)を表現するのに欠かせない、被写体との距離を測るセンサーとして活用するToFカメラの4つを搭載している。

望遠、広角、超広角、被写体測定用と4つのカメラを搭載。超広角カメラは4800万画素のセンサーを採用している
望遠、広角、超広角、被写体測定用と4つのカメラを搭載。超広角カメラは4800万画素のセンサーを採用している

 大きなポイントは4800万画素のカメラだ。4つの画素を組み合わせ、1200万画素の高感度撮影ができる他、8Kの動画カメラとしても活用できる。撮影した8K映像を5Gの高速回線によってアップロード可能で、それを8Kテレビで視聴したり、今後発売を予定しているDynabookの8K対応パソコンで編集したりできるという。

 とはいえ8Kに対応したデバイスはそもそも高額で数が少なく、持っている人も多いとはいえない。そこでAQUOS R5Gは、8Kの高精細映像を活用した機能として、映像の中の特定の被写体にズームして追従する「8Kフォーカス再生」と呼ぶ機能を搭載している。これにより超広角カメラの映像全体を見るだけでなく、子供やペットなど、より大きく見たいと思った被写体にフォーカスした視聴が可能になるという。

「8Kフォーカス再生」は8Kの高精細な映像を活用し、通常の画角だけでなく特定の被写体だけにフォーカスした映像再生が楽しめる
「8Kフォーカス再生」は8Kの高精細な映像を活用し、通常の画角だけでなく特定の被写体だけにフォーカスした映像再生が楽しめる

 もう1つの大きな特徴がディスプレーだ。5Gでは、「ギガ死」などスマートフォンが抱えていたデータ通信に関する制約が取り払われる可能性が高い。それを受け、外出先だけでなく自宅でもスマートフォンで映像などを楽しむ人が一層増えるとシャープは考えており、AQUOS R5Gではスマートフォンが真の“ファーストスクリーン”になることを意識したディスプレーを目指したという。

 そのためには環境やコンテンツに合わせた最適な表示が求められると判断。そこで新たに採用したのが6.5インチの「Pro IGZO」ディスプレーだ。まず最高1000カンデラという非常に高い輝度を実現し、明るい屋外でも表示が見やすい。さらにセンサーで検出した周囲の光の度合いから明るさや色合いを最適化する「スマートカラーマッチング」や、環境に応じてバックライトを制御し、電力の無駄や白飛びなどを抑える「HDRエンハンサー」といった機能を搭載する。こうした環境に合わせて画面を見やすくするインテリジェントさを取り入れた点が大きな進化だ。

スマートカラーマッチング機能のデモ。周囲が寒色系の色の部屋では、通常ディスプレーの色がやや暖色気味になるが、この機能を使えば環境に応じて正しい色合いで表示してくれるという
スマートカラーマッチング機能のデモ。周囲が寒色系の色の部屋では、通常ディスプレーの色がやや暖色気味になるが、この機能を使えば環境に応じて正しい色合いで表示してくれるという

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