“教えるプロ”になるために……野球評論家 工藤公康

教えるということは決して軽いことではありません。その児童や学生を深く観察し、理解しなければなりません。投げ方や走り方、バットの振り方。野球の基本動作ひとつにしてもその子供なりの個性があるはずです。それをかつてプロだったからといって、自分の経験した知識の範囲で教えても良いのでしょうか?

指導者には野球の技術だけでなく、人間の体やトレーニング理論など、教えるための専門知識が必要になる

もしも「元プロ野球選手」が教えるのならば、その人には、投球のメカニズムや筋肉の働き、発達段階に応じたトレーニング方法を知り、ケガをさせないための知識も必要なはずです。

万一、故障した時にはお医者さんの話している内容を理解できなければいけない。故障がなぜおきたのか。回復までどれぐらいかかるのか。リハビリやその後のトレーニング、試合に復帰するまでどういう手順で進めればよいのかなどを「元プロ」だからこそ、知らなければならない。

「元プロ」だからこそ、さらに知識を高め、学び、現役生活を送ったことがすべてではない、という事実を自ら受け入れ、勉強し直す必要があると、私は思うのです。

プロ野球を経験したからといって、何か資格を得られるわけではありません。たまに野球教室に呼ばれることはあったとしても、高校生ら学生を継続的に教えることと野球教室とは別物です。その選手の未来を変えてしまう可能性もあるのですから。

指導者を志す元プロ野球選手は、野球以外の知識を含めて、たくさんのことを学ばなくては、とても子供たちに教えることはできないはずです。

関係者の話し合いでは、プロ側と学生側がそれぞれ独自の研修を用意することになるようです。高野連など学生野球側のカリキュラムは17時間程度との情報も聞きますが、それでは短いとさえ思っています。

指導者になることは、実に重いもの。単なる元プロ選手の「再就職活動」となってはいけないはずです。

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