電動アシスト自転車は“田舎暮らしシニア”向け
もう1つ、田舎暮らしの手軽な足となりそうなのが、電動アシスト自転車だ。「クルマは運転できるけど、オートバイやスクーターには乗ったことがない」というシニア女性などには、特におススメ。これも「ガソリン不要の移動手段」の1つということになろう。
初めて電動アシスト自転車が発売されたのは1993年で、今年でちょうど20年になるそうだ。元々が脚力や体力の衰えたシニアにも乗りやすい自転車を目指して実用化されたものだが、発売当初は機能的にも、デザイン的にもまだ十分にこなれていなかったきらいがあり、「シニア層が乗りこなすのは難しい」という評価もあった。
だが、現在では様相が一変。大手自転車メーカー各社ではシニア向けの様々な親切機能・設計を取り入れた最新モデルを投入している一方、ノーブランド商品の中には5万円を切るような廉価モデルも現れるなど、選択の幅が広がっている。
今回紹介するのは、世界で最初に電動アシスト自転車を開発したヤマハ発動機が今春発売した「PAS(パス)」の2013年モデル。幅広い年代をターゲットにママチャリ的な日常遣いを想定した「PASナチュラL」など24、26インチの3機種(希望小売価格10万8000~11万3000円)と、シニアにも乗りやすい20インチの「PASコンパクト」など3機種(同10万6000~10万9000円)が新たにラインアップに加わった。
いずれのタイプも、ペダルを踏む力を感知する「トルクセンサー」、車速を感知する「スピードセンサー」、ペダリングの速度を感知する「クランク回転センサー」の3つのセンサーを搭載し、乗った瞬間から最適なアシスト力を発揮する、というのが最大のセールスポイントだ。
同社の東京オフィスを訪ね、「ナチュラLデラックス」の26インチ車に試乗させてもらった。ペダルに足をかけて強く踏み出した瞬間に、体が少し後ろに押されるような感じでアシスト力が加わることを実感できた(この感覚はけっこう快感!)。それ以上に驚いたのは、普通に漕いでいる時のペダルの軽さ。ほとんど踏んでいる感覚がないくらいで、真っ平らな道を5段変速サイクリング車の一番軽いギアで走ったときよりもさらに軽い印象。丸の内のオフィス街の一角をごく短時間乗っただけだが、なるほど、これなら坂道も楽々上がって行けそうだ。
アシスト力は「強モード」「標準モード」「オートエコモードプラス」の3モードを選択できる。リチウムイオンバッテリーは家庭のコンセントから充電でき、要する時間は4.5時間ほど。1回の充電で32~45キロメートル程度をアシスト走行できるので、普通の使い方なら週に1、2回の充電で十分という(13年モデル全機種には、メーターに「残りアシスト走行可能距離」を表示する機能が付いている)。
電動アシスト自転車は本来タウンユースの自転車ではあるが、田舎暮らしで使う場合も、坂道が都会より多かったり、買い物のために遠出せざるを得なかったりするので、シニアにとって重宝しそう。もちろん、豊かな自然環境を楽しむためのサイクリング用としても利用できるし、健康作りのためになるべく自力で乗りたいという人なら、電動アシスト機能をオフにして使用することも可能だ。
同社東京広報グループの齋藤真理子さんは「電動アシスト自転車を一番快適に使用できるのは、時速10キロくらいで走るときなんです。景色を満喫するのにも、ちょうど良い速度ではないでしょうか」と説明してくれた。