災害の備えにも ガソリン不要の田舎暮らしお助け機器

2013/6/13

シニアの道具箱

シニア憧れの「田舎暮らし」。リタイアを機に地方への移住を計画しているシニアも多いだろう。ただ、都会と違って地方での生活には様々な不便さがつきまとう。今回はこれから田舎暮らしを始める人のための“手間いらず製品”を紹介しよう。キーワードは「ガソリン不要」。(ジャーナリスト・高嶋健夫)
「国際バラとガーデニングショウ」に出品したホンダのガスパワー耕運機「ピアンタFV200JG」は、グリーンのボディーカラーを採用した期間限定モデル(基本仕様は通常モデルと同じ)

カセットコンロのボンベで動く家庭菜園用ミニ耕運機

埼玉県所沢市の西武ドームで5月に開催された「第15回国際バラとガーデニングショウ」(主催・同ショウ組織委員会)。ガーデニング愛好家でごった返す会場でひときわ目立っていたのが自動車メーカー、ホンダの出展ブース。小さなイングリッシュガーデンとログハウス風のガレージをしつらえたブースに軽自動車「N-ONE(エヌワン)」が展示され、「なんでホンダが出ているの?」といぶかる女性グループの会話も聞こえてきた。

実はこのブース、芝刈り機、耕運機、発電機といった同社の汎用製品をPRするのが目的。その目玉商品に位置づけていたのが“ガスパワー耕運機”と名付けた一般家庭向けのミニ耕運機「ピアンタ FV200」(希望小売価格10万4790円)と「サ・ラ・ダCG FFV300」(同19万9500円)だ。前者は3~30坪(約10~100平方メートル)での作業を想定した入門モデル、後者はそれより一回り広い100坪(330平方メートル)クラス用のモデルだ。

いずれも、家庭菜園での野菜作りや本格的なガーデニングに挑戦したいと考えているシニア層や専業主婦をターゲットに開発した“趣味の園芸”用の小型耕運機。リタイア後に土いじりを始めるシニアは急増しているが、“都会育ち”の柔なシニアにとって農作業はかなりのハードワーク。そこで「農機具の扱いに不慣れで、体力的にもちょっと……」という初心者のために「扱いやすさ」を徹底的に追求した。

小柄な女性でも楽に動かせるように小型軽量化し、ハンドルを折り畳めるようにするなど操作性や収納性にも配慮している。中でも一押しのセールスポイントがエンジンを回す燃料にガソリンや軽油ではなく、カセットコンロ用のガスボンベを使えるようにした点。お鍋料理を楽しむ時に食卓に登場する、あのテーブルコンロ用の小型ボンベである。

操作は至って簡単。ボンベを専用ケースに入れて、ケースごと耕運機本体にセットするだけ。「あんな小さな燃料でどのくらい作業できるの?」と少し心配になるが、1本のボンベ(250グラム)で土を起こしたり、畝(うね)を作ったり、雑草を除去したりといった一般的な作業なら、「ピアンタ」で約1時間、「サ・ラ・ダCG」でも約50分の連続運転ができるというから驚きだ。

同社広報部の香川信主任によると、開発のきっかけは、同社が実施した市場調査。「耕運機はほしいが、まだ買っていない」という人にその理由を聞いたところ、「燃料」がハードルになっていることがわかった。「ガソリンは取り扱いが危険」「ガソリンスタンドまで買いに行くのが大変」「給油するときに手が汚れる心配があるし、あの臭いも嫌い」など、とりわけ女性層に評判が悪かった。

そこで「手軽に扱える燃料」として目を付けたのがカセットガス、というわけ。カセットコンロは「1家に1台」あるおなじみの生活道具。取り扱いが簡単で多くの人が慣れているから、ガソリンに対するような抵抗感もないはず、と考えたのだ。

実際、2009年3月に発売した「ピアンタ」は年間6000台の販売目標を発売後数カ月で達成するなど、予想を上回るヒットに。そこで、今年3月には上級シリーズの「サ・ラ・ダCG」にもガスパワーモデルを新発売。こちらも年2500台の販売目標に対して、3~4月の2カ月間だけですでに1400台を受注し、好調な滑り出しという。

注目記事
次のページ
家で充電できる電動式耕運機、カセットガスの発電機も