「人馬一体」の楽しさが原点、チームで共有めざし論文元マツダ「ロードスター」開発主査 貴島孝雄氏(8)

「楽しい」を技術に置き換える

貴島氏は初代を改めて理解する必要があると思い、02年ごろに初代の開発主査だった平井敏彦氏を訪ねた。平井氏はマツダを退社した後、広島に住んでいた。

平井さんはロードスターは9割が海外で販売されていることを指摘し、米自動車技術者協会(SAE)に人馬一体をテーマにした論文を出すことを提案した。

平井さんは人馬一体を提唱し、おおらかな人柄と広島弁で開発チームを率いていた。私は私のやり方でまとめなければいけない。平井さんの知恵を借り、ロードスターが意図するものを論文という有形物にし、チームの考えを一つにしようと思った。

題名は「感性エンジニアリングによるクルマづくり」とした。感性エンジニアリングとは「楽しい」という感覚を技術に置き換えることだ。東京大学の藤本隆宏・ものづくり経営研究センター長は、ものづくりとは技術者の考え方(コンセプト)を形に転写することと定義している。

論文では人馬一体を、品質管理で使う「フィッシュボーンチャート」と呼ぶ概念図や写真を使って解説した。最初に提出した論文はSAEの添削で真っ赤になって戻ってきた。やぶさめや能面など日本文化の説明が米国人には難しすぎたようだ。米フォード・モーターからきていた米国人社員らに英語の表現を教えてもらいながらまとめ、03年3月に米デトロイトで開かれた学術会議で発表することができた。

論文の発表後、社内で約50人が参加して開発チームの立ち上げ式を開いた。私は「日本カー・オブ・ザ・イヤーをとれるクルマをつくろう」と呼びかけた。

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[日経産業新聞 2008年5月20日付]

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