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司法試験の合格発表を見て喜ぶ受験生ら(2019年秋、東京都千代田区)

司法試験の合格発表を見て喜ぶ受験生ら(2019年秋、東京都千代田区)

企業や役所、病院、学校などで働く弁護士が増えているって聞いたわ。弁護士といえば、かつては裁判所や法律事務所などで仕事をしているイメージが強かったけど、どうしてなのかな。

多様化している弁護士の仕事の状況や背景について藤井智子さんと酒井あすかさんが渋谷高弘編集委員に聞いた。

――裁判所や法律事務所以外で仕事をする弁護士はいつごろから増えているのでしょうか。

10年ほど前からです。企業のほか、中央官庁や自治体、学校、病院、農協、さらには日本相撲協会などで働く弁護士もいます。その中でも、主に企業や団体に雇用されて従業員として働く「インハウス(組織内)弁護士」が増えています。日本組織内弁護士協会の調査では、2017年末時点で2000人を突破し、19年6月時点で2418人と10年前の7倍に増えました。

――なぜそんなにインハウス弁護士が増えているのですか。

いくつか理由があります。まず、個人情報の取り扱いや知的財産の保護、M&A(合併・買収)や新規事業の立ち上げなど法務のスキルが求められる場面が広がっていること。インターネット通販を手がける企業のほか、自動車などのメーカーや金融機関、商社などが法律に精通した社員としてインハウス弁護士を積極的に採用しています。「守り」を固め、持続的な成長をめざす企業も目立ちます。

また職場でハラスメントが相次ぎ発覚する中で、法令順守(コンプライアンス)の徹底に取り組む組織も増えています。学校の現場ではいじめや保護者とのトラブルなど法的アドバイスが必要な場面が増えており、状況に応じた的確な助言が期待できる「スクールロイヤー」の導入に踏み切る自治体などもあります。

ニーズが拡大する中で、中堅や若手の弁護士の意識が変わってきていることも、インハウス弁護士の増加に関係しているようです。

――中堅・若手の弁護士の意識はどう変わってきているのですか。

かつては司法試験に合格したら、裁判官か検察官などになるか、弁護士として法律事務所に入るのが一般的でした。法律事務所の弁護士は個人や企業の依頼を受け、法律相談に乗ったり依頼者の代理人として相手と交渉したり、訴訟で戦ったりします。

依頼人が個人なら離婚や遺産相続など、企業なら取引先との交渉や契約書の確認、M&Aの際の買収先企業のデューデリジェンス(資産査定)といった仕事を手がけます。

報酬の面では、組織内弁護士協会が19年にインハウス弁護士を対象に実施したアンケート調査によると、回答者の6割超が1000万円未満にとどまっていました。

ただ、インハウス弁護士となった先輩の話を聞いて企業や団体で働くことに関心を持つ若手弁護士は増えました。法律事務所と企業の両方で働いたことがある中堅弁護士からは「法律事務所は休みが取れない。時給に換算したらインハウス弁護士の待遇は悪くない」との声も出ています。

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