開発は土日・就業時間外に 駐車場に製図板

オフライン55の段階では予算を十分に確保できない。平井主査から開発チームへの参加を誘われた貴島氏らは、本社のデザイン部門の駐車場5階に20台の製図板を持ち込み、開発プロジェクトを立ち上げた。

最初は本当に手弁当だった。各部から参加した技術者はそれぞれ仕事を抱えていた。私もトラックとRX―7のシャシー開発で忙しかった。だがオープンカーを開発できるなんて技術者にとって仕事というより趣味のようなものだ。土日や就業時間外に集まり、活気があった。

走行性能を重視するためフロントエンジン後輪駆動(FR)構造にしたい。しかし専用エンジンを開発する資金はないので、フロントエンジン前輪駆動(FF)の小型車「ファミリア」に搭載しているエンジンを活用するしかない。FFのエンジンをFR用に縦置きにすると邪魔になる部品がある。駆動系部品の改良を担当部門に頼んだら「難しい」と断られた。

仕方がないので専門外の私が駆動系部品の図面を書いた。今、当時を振り返るとよくやったと思うが、それほどモチベーションが高かったのだ。やりたいことだと自然とエネルギーがわいてくる。

開発人数が足りず、英国人技術者二人を契約社員としてチームに招いた。当時は技術者の派遣会社が日本にはなかった。英国人技術者と設計図の書き方を巡って意見が対立することもあったが、居酒屋で酒を飲みお互いの理解を深めた。

経営陣から承認が下り、人数が増えても、最後まで駐車場で開発を続けた。居心地がよかったからだ。駐車場なのでライバル車を置いて比較できた。89年に初代ロードスターを発売した時は、91年発売予定の3代目RX―7の開発が佳境を迎えていた。ロードスターの反響を肌で感じることはできなかった。

[日経産業新聞 2008年5月14日付]

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