親子でも「気軽に読める世界史の本」ランキング
大型連休も残すところあとわずか。気軽に読めて役に立つ世界史関連の本を「大人向け書籍」「学びに役立つ漫画」「家族で楽しめる本」の3分野で専門家に選んでもらった。
<学び直す>
教科書を一般読者向けに 高校の世界史教科書を一般読者向けに書き改めた。絞り込まれた簡潔な記述に加え、地図や年表も備えている。「パレスチナ問題」など重要キーワードを解読するコラムも豊富で、ここだけを読んでも勉強になる。「世界史全体の流れをつかむのに最適。さすが教科書」(尾崎歩さん)
(1)『世界の歴史』編集委員会(編)(2)山川出版社(3)1575円
文明に科学的アプローチ 世界各地の文明の成立とその広がりを科学的アプローチで解き明かす。「世界史の勝者と敗者について『視点』を教えてくれる」(絹川篤司さん)。少し変わったタイトルは欧州人が他大陸を征服できた要因を凝縮して表現したもの。
(1)ジャレド・ダイアモンド(2)草思社(3)上下巻各945円
昔話を語りかけるように 1935年に、ウイーン生まれの美術史家が原始から第1次世界大戦までを昔話を優しく語りかけるように記した。物語としての世界史の本。「すてきな本。若くない読者が読んで、子や孫に話してあげて」(北哲司さん)
(1)エルンスト・H・ゴンブリッチ(2)中央公論新社(3)上巻800円、下巻700円
大学でヒット、火付け役に 大学生協で人気となり、世界史書籍ブームのけん引役となった。世界で40年余り読み続けられている。「素材の選択といい、練れた叙述といい、現代最高の『読みやすい版』の世界史」(樺山紘一さん)
(1)ウィリアム・H・マクニール(2)中央公論新社(3)上下巻各1400円
常識壊し新たな見方提示 ヨーロッパ中心の歴史観など日本人の持つ世界史の常識を壊し、現代にふさわしい世界史を構想する。「従来の西洋史・東洋史という対立ではなく、新しい世界史の見方を提示している」(喜田浩資さん)
(1)羽田正(2)岩波書店(3)798円
(1)小谷野敦(2)新潮社
7位 子どもたちに語るヨーロッパ史
(1)ジャック・ル・ゴフ(2)筑摩書房
8位 自由からの逃走
(1)エーリッヒ・フロム(2)東京創元社
9位 50のドラマで知る世界の歴史共生社会の再構築へ
(1)マンフレッド・マイ(2)ミネルヴァ書房
10位 グローバリゼーション人類5万年のドラマ(上・下)
(1)ナヤン・チャンダ(2)NTT出版
<漫画で楽しむ>
140人以上の生涯を1冊に 歴史上の140人以上の人物について、彼らが果たした役割やその生涯をそれぞれ2~6ページに凝縮してまとめた。時折ギャグも交え、興味をそらさない工夫も。「世界史が勉強になる前に楽しみながら学べる1冊」(浜野千絵さん)
(1)小西聖一(作)おだ辰夫(漫画)近藤二郎(監修)(2)小学館(3)1155円
愛着を持つ専門家も多く 世界の歴史を15の時代にわけて描く。「小学生のころの楽しみは学研のまんが歴史ものを読むことだった」(岡美穂子さん)など、専門家でも愛着をもつ人が多い。
(1)長沢和俊(監修)、ムロタニツネ象(漫画)(2)学研教育出版(3)12285円(全15冊セット)
激動の古代地中海を描く 舞台は紀元前4世紀のギリシャやマケドニア王国など。アレキサンダー大王の書記官エウメネスの波乱にとんだ生涯を通じて、激動の古代地中海世界を描く。「政治的な駆け引きの描写が巧み」(関口靖彦さん)
(1)岩明均(2)講談社(3)560~580円(1冊)
<親子で開く>
ビッグバンから現代まで ビッグバンから現代のグローバル化までの膨大な歴史を42のテーマから、500点にのぼるカラーの写真図版を駆使して紹介する。文系・理系双方の視点から語る歴史。「単に知識をまなぶだけでなく、家族で楽しめるお薦めの1冊」(池上彰さん)
(1)クリストファー・ロイド(2)文芸春秋(3)3140円
鮮やかな色使いが魅力 鮮やかな色使いの地図や年表と、親しみやすいイラストで文明の誕生から現代までの世界の歴史を視覚的に紹介。巻末の用語索引は便利。「大判なので家族で見るのにちょうどいい」(山村弓子さん)
(1)-(2)成美堂出版(3)1365円
遺品や遺跡で振り返る 大英博物館の所蔵品から食器や兵器など100点を選んで解説しながら世界を網羅する。「太古から現代まで遺品や遺跡の写真を通じて世界史を振り返る好著」(油井大三郎さん)
(1)ニール・マクレガー(2)筑摩書房(3)1巻1995円、2.3巻各2205円
表の見方 数字は選者の評価を点数換算。(1)著者、監修者など(2)出版元(3)税込み価格、大人向け書籍6位以降は本の名前、著者など、出版元の順
連休残りわずか 歴史歩く旅へ
ここ1~2年、世界史関連の本はかつてない人気を博している。大人向け書籍で1位の「もういちど読む山川世界史」は28万部、2位「銃・病原菌・鉄」が上下巻計33万6千部、4位「世界史」が同49万部とヒット作がズラリと並ぶ(部数は4月下旬時点)。
ある出版社は「以前は世界史の専門書は5千部を超えればヒットだった」と話す。出版科学研究所(東京・新宿)は「大人の学び直しブームが底流にあり、そこへ従来とは異なる特徴的な本が増えた」とみる。今回選ばれた本の多くは、西洋中心の史観に縛られず、より多様な国・地域の歴史を柔軟に紹介している。
好みの世界史本を手に取って、見知らぬ異国の風土と悠久の歴史に思いをはせる。そんな疑似旅行はいかがだろう。
◇ ◇ ◇
調査の方法 世界史に関係する本を「大人向け書籍」「学びに役立つ漫画」「家族で楽しめるビジュアルな図鑑など」の3ジャンルに分け、選者には1ジャンル3冊以上を原則に順位付けしたうえで推薦してもらった。選者は以下の通り(敬称略、五十音順)
池上彰(ジャーナリスト、東京工業大学教授)▽岡美穂子(東京大学史料編纂所助教)▽尾崎歩(リブロ福岡天神店)▽小田中直樹(東北大学教授)▽樺山紘一(印刷博物館館長)▽北哲司(八重洲ブックセンター本店)▽喜田浩資(丸善丸の内本店)▽絹川篤司(TSUTAYA三軒茶屋店)▽島田竜登(東京大学文学部准教授)▽関口靖彦(「ダ・ヴィンチ」編集長)▽幅允孝(BACH代表・ブックディレクター)▽浜野千絵(楽天ブックス書籍バイヤー)▽山村弓子(紀伊国屋書店新宿本店)▽油井大三郎(東京女子大学現代教養学部教授)
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