社会の変化気づく力 サントリー商品開発なぜ強い[PR]
サントリー/商品開発担当者編
ミルクティーづくりは甘くない 青いパッケージに込めた意志
コーヒー飲料の一般的なイメージといえば、男性、屋外、缶の容器……、などが代表的なところだろうか。しかし、それとは真逆の、女性がオフィスでペットボトルから飲むシーンに合う商品がある。サントリーの「クラフトボス」シリーズだ。男女問わず、仕事中に飲みたいオフィスワーカーのニーズをつかみ、2017年の発売以降ヒットを続けている。
ブランド戦略を担当するサントリー食品インターナショナルの若杉はるなさんは、クラフトボスの可能性をコーヒーからさらに広げた立役者だ。「"快適に働く新しいきっかけを、商品やコミュニケーションで提案する"ことが、『クラフトボス』というブランドのミッション。そう考えると、コーヒー以外の選択肢があってもいいはず。2019年から紅茶カテゴリーにチャレンジしており、同年7月にミルクティーを発売しました」
もちろん、ペットボトルのミルクティーというカテゴリーは以前から存在していた。ただし、砂糖がたっぷり入った、まるで「おやつ」のような甘くて濃い味わいの商品が大半。「手いれやカフェのミルクティーは大好きだけど、ペットボトルのミルクティーは苦手…という方が多いことに着目しました。そんな人にとっては、仕事中に手軽に飲めるミルクティーが世の中に無いわけです。私たちは勝手に"隠れミルクティーユーザー"と呼んでいたのですが、彼らが仕事中にも手軽に飲める、おいしいミルクティーを作りたいと思ったのが商品発売のきっかけです」
"隠れミルクティーユーザー"の嗜好を徹底的に調査し、100回以上の試作を重ねた結果、満足感があるのに後味すっきり心地よく飲める、これまで紅茶市場になかった新しい味わいを実現できた。「ただ甘さを控えるだけでは、おいしい味は作れません。紅茶の華やかな香りと、ミルクの心地よいコクとの絶妙なバランスが、この味を支えています。それには、「ボス」がこれまで培った技術・製法も存分に活かされています」
ただ、味と同じくらい若杉さんがこだわり抜いたことがある。それが、パッケージデザインだ。透明なボトル、そこから透けるミルクティーの色をベースに、明るく爽やかな『ペールブルー』のラインが異彩を放っている。
ミルクティーの定番カラーと言えば白、ネイビー、ゴールド。それらが伝統的な紅茶の世界観を表現し、「休憩中に飲むもの」「甘くて濃くておいしそう」というイメージを形づくってきたのは事実だが、若杉さんの狙いは今までのミルクティーとは異なり、「働く人の気持ちを軽やかにし、気分を上げる」というもの。このため、イメージづくりには徹底的にこだわった。
「開発の過程でたくさんの隠れミルクティーユーザーさんに実際にお話を聞きましたが、ミルクティーを選びたくなるのは決まって、"仕事でモヤモヤ・ストレスを感じる日"でした。現実逃避したくなるけど、現実はそうはいかなくて、モヤモヤを心に溜めたままオフィスにこもってパソコンをカタカタ打っている…。外に出て、晴れた空の下で背伸びするような、飲んだ人をそういう清々しい気持ちにしてあげられたらいいな、と考えました。ブルーのリネンシャツのような、軽やかで爽やかなこの色をキーカラーにしようと決めたのは、そういう理由です」
「かわいすぎる」「紅茶の色使いではない」。これまでの常識に反していれば、反対意見も出る。「本当にこのデザインで大丈夫か?と心配する声はかなり多かったです。でも……」。若杉さんが頭の中に描いたのは、実際に会った顧客たちが「クラフトボスミルクティー」を飲んだ結果、心が癒やされるだけでなく、少しでも前向きになれて、仕事がサクサクとはかどっている姿だ。「チームで意志を持って、この色でいきたい、と強く押し出しました」
サントリー社員が胸に刻んでいる言葉「やってみなはれ」。創業者の鳥井信治郎氏が新事業に挑戦する社員を「やってみなはれ」と励ましたときのDNAが脈々と今に受け継がれている。若杉さんにとって、ペールブルーを選んだ瞬間が「やってみなはれ」のときだった。「たかがパッケージの色一つと思われるかもしれませんが…、『これで行きたい』というチームの強い意志がなければ、きっと通らなかった。わたしにとって『やってみなはれ』は、『そこにあなたの意志がちゃんとあるか?』と問われるのと同じです」
逆に言えば、その人の意志がある提案ならば、サントリーでは通るということだ。若杉さんは「会社は結局すごく後押ししてくれて、お客様にも『いいね』と言ってもらえて、おかげさまでたくさん売れました。この体験がものすごく自信になっています」と振り返る。
最後にブランド戦略の仕事そのものについて聞いた。「就職を控えた大学生からすれば、ブランドに携わる仕事って、ちょっとキラキラしたものに見えますよね。わたしも営業担当からブランド戦略担当に移る前はそう思っていました(笑)」
もちろん華やかな側面はある。それでも若杉さんは「答えがない仕事なので、とにかく色々な角度から世の中を見て、チームで議論して、考えて考えて、『たぶんこっちだ』と、進む道を自分たちで決めていくしかない。かなり地道だし、遠回りをすることも多いし、怖い時もあります。でも怖さも大切。なぜなら『絶対に大丈夫だ』と思えてしまうアイディアって、既に世の中に存在する可能性が高いからです。新しい挑戦だから不安なわけで、最近は『健全なドキドキ』は大事かなって思ったりします」
ブランド戦略の仕事で大事なことは、世の中の変化に気づくことと、人の行動の背景にどんな理由があるのかを考えることだという。身に付ける秘訣は? 「自分が触れたことのない、新しいものにどんどん出会いに行くことなのかなと。年齢やバックグラウンドの違う人と面倒くさがらずに会ったり、飲みに行ったりすることも一つですかね。楽しくてやっているだけなんですけど」と笑顔を見せた。
ラボから飛び出し現場に 味の「いま」をお酒で表現する仕事
商品開発者と聞くと、どのようなイメージを持つだろうか。白衣を着てラボのようなところにこもっている人? 一般的なイメージとして必ずしも間違いではないが、サントリースピリッツの菅野弦哉さんは日々ラボから飛び出し、スーパーやコンビニエンスストア、飲食店、さらには花見スポットなど「現場視察」に余念がない。
菅野さんが担当しているのは、低アルコール飲料市場を切り開いたといわれる「ほろよい」シリーズ。若者のビール離れが叫ばれる中、アルコール度数3%(一部4%)の気軽に試せる商品として2009年に発売されたほろよいは、サントリーの戦略商品の一つだ。菅野さんは2014年から携わっており、「ほろよい」10年の歴史の半分をみてきたことになる。
「『こんな味をつくってほしい』というマーケティングサイドの注文にただ答えるような受け身の仕事ではないんです。缶からそのまま飲むのか、グラスに移すのか、氷を入れるのか入れないのか、どんなシーンで飲んでいただけるかなど、どうすればお客様に喜んでいただけるのかを常に考えながら、味の提案をしています」
実際、菅野さんは積極的にスーパーの店頭や飲食店に足を運ぶ。ちょっとした世の中の変化や流行を感じ取り、商品づくりに生かすためだ。
ある日菅野さんは、以前と比べてさまざまな種類の白ぶどうが店頭に並ぶようになっているのに気づいた。ぶどうといえば、それまでは赤が主流だった。ところが、マスカットをはじめとした白ぶどうの存在感が高まっており、実際に売れているのを見て取ったという。
「白ぶどうの『ほろよい』をつくってみたらどうだろう」と思い立ち、あらゆる白ぶどうを食べ比べて味のイメージを膨らませるところから、開発をスタートした。
「高級なマスカットは華やかすぎて、『ほろよい』のコンセプトとは違う。そんなに高級すぎないで、手に取りやすい、さわやかな味にしたい」。試作品をつくって次の日に試飲・改良。そしてまた試作し翌日試飲という繰り返し。マーケティング担当者とも週に1回はコミュニケーションを取りながら、約半年後の2016年3月、「ほろよい」の新しい味「ほろよい〈白ぶどう〉」が世に送り出された。菅野さんがはじめてつくったいわゆる定番商品だ。
売れない商品は消えていくシビアな世界にあって、「ほろよい〈白ぶどう〉」はいまもなお順調に売れ続ける主力商品に育った。「お客様が実際に買っていただいている場面を見ると、本当にうれしいですね」
大学時代の専攻は応用化学で半導体の研究をしていた菅野さん。なぜサントリーに? 「専攻をそのまま生かすのであれば電機や機械メーカーに就職するような研究をしていたのですが、もっとお客様に近いものをつくる仕事をしたかったんです。それで食品メーカーを志望しました」
サントリーは商品開発者にとって、自由度の高い職場だ。菅野さんが開発したある独自原料は、今のほろよいの担当になる前から仲間とあたためていた案件を成就させたものだ。
「上司から指示されたわけではなく、仲間たちと手を動かしてつくった。やりたいという意志があれば、会社はGOサインを出してくれるし評価もしてくれる」と満足げ。これもサントリーの「やってみなはれ」という企業文化の一環だろう。
「ほろよい」は既に10年選手。次の10年をどう進めていくのか。「一般的なフルーツ味はほとんど出してしまいましたね」としながらも、「例えば、お酒を飲めない年齢で体験した味を、今度は大人になってお酒として楽しんでもらえるような提案をできればいいなと思っています。『ほろよい〈ハピクルサワー〉』などはそういったコンセプトです」
最後に商品開発者として最も苦しいのはどのようなところなのかを、あえて聞いた。菅野さんは「お客様に常に驚きと感動を提供できるように、新しい価値を追求し試行錯誤を繰り返しても、なかなか結果が出ないときです」と答えた。その上で、「開発にはゴールがありません。10人の開発者がいれば、10人の違う味が出てくるような決まった正解のない世界なんです。それでも、決められた条件の中で最大限のおいしさを表現するのが難しいところでもあり、やりがいのあるところでもあります」と力強く語った。
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