日経クロストレンドが「日経ビジネス」と共同で全国1万人を対象に実施した「47都道府県キャッシュレス決済普及率ランキング2020」調査では、「PayPay」や「LINE Pay」など具体的なサービスの利用率もあぶり出した。分析詳報の後半となる本稿では、加えて男女別、世代別、さらに都道府県別に各サービスの支持傾向がどう違うのかについて詳細に見ていく。

「47都道府県キャッシュレス決済普及率ランキング2020」で各サービス別に支持傾向を分析。各社の強みや課題がそこから浮かび上がった(写真/Shutterstock)
「47都道府県キャッシュレス決済普及率ランキング2020」で各サービス別に支持傾向を分析。各社の強みや課題がそこから浮かび上がった(写真/Shutterstock)

 まず「47都道府県キャッシュレス決済普及率ランキング2020」の概要を説明する。この調査は、調査会社マクロミルのモニターを対象にインターネットアンケート調査の形で実施した。ネット通販での買い物や鉄道・バスなどで定期券・乗車券としての利用は除き、日々の店頭での買い物について回答してもらった。街中で消費者がキャッシュレス決済をどのような形で生活に取り入れているかを浮き彫りにするためだ。

 前編では「クレジットカード」「QRコード決済」など手段別に支持傾向がどう違うかを見たが、後編となる本稿では調査対象1万人のうち、QRコード決済を知っていると回答した4841人に対して追加アンケートを行った結果を分析している。既に積極的にキャッシュレス決済を使っている消費者の動向を調べることで、各社の実力値や潜在的な可能性をあぶり出せると考えたためだ。

 なお本稿執筆時の集計に当たっては統計上の偏りを平準化するため、都道府県と年代の分布状況が日本の人口と同様になるようにウエイトバック処理をしている。

 最初に紹介するのが、サービス別の利用率だ。どのキャッシュレス決済サービスを使っているか選んだもらったうえで、利用状況を聞いた。本稿で紹介する利用率とは、「日常的に使っている」「時々使っている」と回答した割合を合算したものだ。加えて、利用率に「登録しているがほぼ使っていない」と回答した割合についても算出し、これを「登録率」とした。

 登録率が意味するところは、試しに登録などしてみたものの、何らかの理由で使うのをためらっている割合だ。利用率との差が小さければアクティブ率が高いが、逆に大きければ使われずに“死蔵”している割合が多いということになる。「使い勝手が悪い」など、ネガティブな理由から使われていない可能性がある。各事業者は自社サービスの優位性を示すため、契約者数やダウンロード数をよく公表するが、利用率と登録率の差分を見れば、利用者の各サービスに対して感じている“熱量”のようなものが浮かび上がる。

WAONやnanacoを抜いたPayPay

 現金を除く、全キャッシュレス決済サービスの利用率は、ランキング上位から1位が「クレジットカード」(84.8%)、2位が「PayPay」(37.2%)、3位が「WAON」(34.7%)となった。以下、4位「nanaco」(32.7%)、5位「プリペイドカード」(32.6%)と続く。

キャッシュレスサービスの利用率トップ10と登録率トップ10サービス
キャッシュレスサービスの利用率トップ10と登録率トップ10サービス
利用率は、「日常的に使っている」「時々使っている」と回答した割合を合算したもの、登録率は利用率に「登録しているがほぼ使っていない」と回答した割合を加算したもの

 注目すべきは2位のソフトバンクグループが提供するPayPayである。詳報前編でQRコード決済の利用率は全体で20.8%と急成長していると説明した。PayPay単独で見ると、楽天ペイ(19.0%、8位)やLINE Pay(18.1%、9位)などの競合を大きく引き離している。PayPayは19年11月に登録ユーザーが2000万人を突破したことを明らかにしているが、本調査の結果からも、乱立したQRコード決済の中で頭1つ飛び抜けた存在になったのは間違いないようだ。加えてアクティブ率が高いことから、それだけ日々使っている利用者が多いようだ。

キャッシュレス決済サービス別に見た利用率と登録率の差分
キャッシュレス決済サービス別に見た利用率と登録率の差分
グラフ中の数字は登録率。利用率との差分が多いほど登録したものの使っていない利用者が多いサービスということになる

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