ひらめきブックレビュー

「えーっと」無くせばもっと伝わる 話し方改善の極意 『スピーチや会話の「えーっと」がなくなる本』

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私は現在、ビジネスパーソンを対象としたセミナーを行う仕事に携わっている。面白いのは、参加者のアンケートだ。内容以上に、講演者の「話し方」について意見が集まる。極端な言い方をすれば、「話し方」が上手であれば、セミナーとしては評価されるようだ。

内容と同等、またはそれ以上に重要な話し方だが、ここに課題を抱えている人も多いのではないだろうか。ありがちなのが「えーっと」「あー」という無意味な言葉だ。本書『スピーチや会話の「えーっと」がなくなる本』はタイトル通り、こうした話中の余計なつなぎ表現「フィラー」(詰め物の意)の解消法を提示。そのうえで、説得力をもった話し方をするコツや心構えを伝授している。

著者の高津和彦氏はテレビ、ラジオ番組のアナウンサーを経て、現在は話し方ワークショップを主催しているスピーチトレーナー。

■心や思考の不安定がフィラーを生む

本書によると、フィラーの原因は「心」「思考」「声」のいずれか、またはすべてが不安定なときに出やすい。不安や緊張やプレッシャーは心の問題、話す内容が決まっていないなどは思考の問題、そして声が小さく滑舌が悪いなどは声の問題となる。この3要素は互いに同期していて、例えば「思考」を安定させれば、感情(心)の揺れをある程度抑えることができるという。

具体的に「思考」を安定させるコツは非常にシンプルで、話を短いセンテンスに切ればいいそうだ。「昨日はいい天気でした。<間>ですから、散歩しようと思いました。<間>こんなふうに思えたのは、本当に久しぶりでした」。このように「。」で区切り「間」を入れる。こうすることで、声のスピードに追われずに、落ち着いて内容を整理しながら話していくことができる。

■伝えたいという強い気持ちが大切

本書は他にも「心」「思考」「声」をコントロールするための方法を披露している。例えば突然「夏休みの予定は?」など決まっていないことを聞かれた場合には、とにかく「私は〇〇します!」など「意思」を見せるようにするとフィラーも出にくくなる、といった実践的な知恵が豊富だ。

スムーズに話の内容を伝える上でフィラーは少ないほどよいのだが、どうしても癖が抜けないという人もいるだろう。そういう場合は、話す時の心構えに意識を向けてほしい。著者は、伝えたいという「正の気持ち」を強く持つことが何より大切だと述べる。「この話を聞いてほしい!」というポジティブな気持ちで話をすれば、話し手がつっかえようが多少のフィラーが出ようが聞き手は気にしない。だが話す気持ちがなかったり、責任逃れや言い訳のような「負の気持ち」があると、フィラーは一気に耳ざわりな音になってしまうというのだ。

たしかに私が経験したセミナーでも、講師の熱と知見を、参加者が共有したという実感があるときほど、評価が高いと感じる。「伝えたい」という思いが力強ければ、自ずと伝え方も工夫され、いわば「一座建立」の状態となるのだろう。フィラーに負けず、「伝えたい」を形にするためのヒントとして、本書をご一読いただきたい。

今回の評者 = 倉澤順兵
情報工場エディター。大手製造業を対象とした勉強会のプロデューサーとして働く傍ら、8万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」のエディターとしても活動。東京都出身。早大卒。

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