新装歌舞伎座はシニアに優しいか 「バリアフリー度」徹底ルポ

約3年ぶりに新装なった歌舞伎座(東京・中央)。柿(こけら)落とし公演には天皇皇后両陛下や安倍首相も訪れるなど、連日大賑わいが続いている。全面改装した理由の1つは「バリアフリー化」。では、実際にどのように変わったか、どんな楽しみが増えたのか。35年以上の歌舞伎・文楽ファンである筆者も自分の“体”で確かめたくて、早速に足を運んだ。今回は、シニア的視点による新装・歌舞伎座“実検”ルポをお届けする。(ジャーナリスト・高嶋健夫)
数段の段差がなくなった新装・歌舞伎座の正面入り口。混雑時の転倒リスクは大幅に軽減された

由緒ある建造物のバリアフリー化に道筋示す

ひとまずは「上々吉」と評価して良いと思う。街づくりや公共施設の整備に「バリアフリー」という考え方が取り入れられるようになって約20年。新装・歌舞伎座は現時点での1つの到達点を示しているように感じた。

銀座のランドマークであり、多くの人たちに代々愛され、記憶・思い出・郷愁の詰まった公共施設の“空気感”を損なうことなく継承しつつ、時代の要請に応えるバリアフリー設計を取り入れ、さらには最新のデジタル機器の導入など将来への改善・発展の余地も残す――。過去・現在・未来をつなぐ困難な連立方程式に一通りの「解」を提供しているからだ。

館内に足を踏み入れた時の第一印象は「昔のままだ!」。予想していた以上に旧・歌舞伎座だけが持っていた独特の雰囲気、味わいが残されていた。この点こそが今回の全面改築の最大の眼目であり、関係者が最も意を注いだ点とも聞く。それを実感できたことが、オールドファンには何よりもうれしかった。

東日本大震災このかた、東京では「耐震化」の名の下に古いビル・建造物の取り壊しが加速し、五十年、百年と続いた有名無名の老舗商店・飲食店の閉店や休業が相次いでいる。地震対策を急ぐ行政の指導が相当に効いているらしい。

耐震化は待ったなしだからやむを得ない面はあるが、建物だけ残っても肝心のコンテンツ(入居する店や施設)が姿を消してしまうのではあまりにも惜しい。

戦後の一時期、東京では都市整備・再開発事業とともに多くの地域で町名変更が断行され、江戸以来の由緒ある地名が無残にも失われた。あの当時と同じような価値観の混乱がまたぞろ始まったのでは、という危機感すら筆者は持っている。

そんな折だけに、新しい歌舞伎座が歴史・由緒ある建造物をさまざまな制約の中で改築・改修していく際のモデルケースとして、全国各地の今後の街づくり・再開発事業の参考になればと思う。

前置きが長くなったが、いざ開演、新装・歌舞伎座の「バリアフリー快適度」を点検していこう。

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