薫製ホッケに七輪料理 隠れた名店のディープな味出張グルメの達人・札幌編

札幌居酒屋めぐりの最終回は個性がとりわけ際立つ居酒屋を紹介しよう。他にはない雰囲気と料理の数々は、一度訪れただけでは味わい尽くせない魅力にあふれている。もったいないから、あまり教えたくないと常連がつぶやく店を発掘した。

ビルのエレベーターを降りると、食欲をそそる香りが漂っているのがすぐに分かる。「おずsmoked和taste」は薫製料理の店だ。

ホテルの和食店で働いていた長井恒輔さんが独立して構えた。「薫製というと硬いとか、しょっぱいとか保存重視の印象が強いけれど、素材を生かした料理ができることを知ってもらいたい」と話す。長井さんは薫製教室の講師も長年務めている。

「薫製界のスイーツ」発見

メニューを見ると、「こんなものも薫製なの?」という料理であふれている。居酒屋定番メニューの枝豆(450円)を頼むと、くすんだ緑色になった豆が出てきた。口にすると香ばしい焦げた香りがついていて、さっぱりした塩味に深い風味が加わっている。

ささみとスモークチーズのシーザーサラダ(780円)は薫製しょうゆをドレッシングに使っているという。こちらは奥の方で薫香をしっかり感じさせる。フレッシュな野菜の味と、ばっちり合っているのに驚いた。

たくあんの薫製であるいぶりがっこを薄く切ったものと、スモークチーズを合わせたつまみは、意外な甘さが前に出ていて、チーズケーキのような味がする。「薫製界のスイーツや!」と内心で叫んでしまった。ベーコンあぶりは熱々でうまい。

チーズといぶりがっこはスイーツのよう

薫製は主に100度近辺の高い温度、短い時間で味・香りを付ける熱薫、もっとも一般的なベーコン、ハムなどによく使う温薫、低温で長時間かけるスモークサーモンなどに使う冷薫の3種類ある。

メーンとして熱薫の姫ホッケが仕上がるのを待ちながら、つまみを食べているとビールとの組み合わせが心地よい。いぶされた香りが、素材ごとにちょっとずつ違う味に結びついており、さっとビールで胃に送り込むと、次の味はなにかなとわくわくしてしまう。

「お待たせしました」。運ばれてきた姫ホッケはスティック状で、生け花のように5本を器に盛ってある。目でも食べられる料理だ。がぶりとかむと、一口目に強い香りがあるわけではないが、ほろほろと身がほどけながら独自の味わいがしみ出てくる。はまる味だ。

店主の長井さんは和食出身

「炉端焼きとか、焼き肉、焼き鳥と同じように、『今日は薫製食べようか』とお客さんが口にするようになってくれれば」と長井さん。なるほど独自のジャンルとして成り立っているのを実感した。薫製しょうゆはドレッシングだけでなく、刺し身につけたり、締めの食事の牛トロ丼のタレにしたり、応用範囲は広い。常連さんには「このしょうゆを分けてほしい」と買って帰る人もいるそうだ。

注目記事
次のページ
本格バルのスパニッシュオムレツにうなる
今こそ始める学び特集