世界のしょうゆ、五輪で発信 食材生かす脇役の進化キッコーマンの堀切功章社長

――70億人に使ってもらうと?

「そうそう。夢はでかく。70億人は言いすぎだけど、海外では少なくとも北米並みの1人当たりの消費量がヨーロッパでもアジアでも南米でもその先にはアフリカでも、という形にしたい。実はアジアは逆に難しいんです。しょうゆに似た調味料が昔からある。魚しょうも中国しょうゆもある。こう食べるとおいしいねというレシピを提案したり一緒に作ったり、非常に手間暇がかかるがチャレンジしないといけない」

「調理人は我々の想像を超えるような使い方をします。この間びっくりしたんですが、欧州のミシュランの星がつくシェフがデザートのチョコレートにしょうゆを使うんです。これが幅が出て絶妙に面白い味になる」

豆乳のアイス 発端はSNS

――キッコーマンといえば最近は豆乳のイメージも強いですね。

「若い人に広げようとフレーバーをつけた飲みやすいものを出して、それが功を奏しています。18年からは消費者が『豆乳を凍らせて食べるとおいしいね』とSNSで拡散するようになりました」

「私どもとしては一瞬戸惑ったんです。凍らせて食べることを想定していなかったから。今のパッケージで凍らせて大丈夫かチェックして問題ないとなったので、こちらから提案しましょうというのが、今年に入ってから。お客さんと双方向のコミュニケーションが広がってきています。それから最近はね、おからがすごいヒットしているんです」

――おからですか?

「おからのパウダーです。ホットケーキにいれたり、ご飯にかけたり。ノンカロリーで繊維が多くて、いろんな使い方ができるんです。今までは業務用で出していて、メインではないので(家庭用は)あまりやっていなかったのですが」

――M&A(合併・買収)はどういうスタンスで考えていますか。

「成長のための選択肢としては十分にありえます。ただし、単に企業規模を大きくするM&Aは関心がなくて。持っている技術・ノウハウなどのシナジーを生み出せるような相手と組めれば。我々は醸造発酵技術を持っています。違う技術とあわせると大きくなる可能性もあるのではないかと。そういうM&Aは十分にあり得ます」

(聞き手は半沢二喜)

堀切功章
1974年慶大経卒、キッコーマン醤油(現キッコーマン)入社。95年に初代プロダクト・マネジャーに就任し「本つゆ」などの開発を手掛けた。2013年から現職。週2回、ジムで水泳や、ウオーキングを欠かさない。引退後の夢はヨーロッパのアルプス山脈をスキーで滑ること。千葉県出身。68歳。
■5%増収も国内が課題
キッコーマンの2019年3月期の連結業績は売上高が前の期比5%増にの4535億円、営業利益は同5%増の384億円だった。国内外で調味料などが好調だったほか、国内の豆乳飲料ブームが追い風となった。課題は国内事業の採算改善だ。19年度の国内の売上高営業利益率は6.6%で前の期比で0.1ポイント下がる見通し。人件費や原材料費の高騰が利益を圧迫する。20年度に8%まで引き上げるのを目標にするが達成は容易ではない。
19年8月には約70億円を投じて建設した新研究所が稼働。発酵・醸造技術の強みを生かし、競合にはない新たな調味料や医薬品原料の開発など技術革新をベースにした新商品作りを急ぐ必要がある。(薬袋大輝)

[日経MJ2019年9月16日付]

マネジメント層に必要な4つのスキルを鍛える講座/日経ビジネススクール

会社役員・経営幹部の方を対象とした、企業価値を高める経営の実務に役立つビジネス講座を厳選

>> 講座一覧はこちら

今こそ始める学び特集
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
注目記事
今こそ始める学び特集
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら