――世界で研究競争が起きているのですね。

量子コンピューターの概念が提案されたのは1980年代です。その後日本でもNECなどの企業や大学が研究に取り組み、その過程で重要な役割も果たしました。ただ残念ながら今は外国企業などが先を行っています。

最初に量子コンピューターを開発したと発表したのはカナダの会社です。現在はグーグルとIBMが代表格といえるでしょう。計算能力は量子ビットの数に左右され、今回のグーグルは53でした。IBMも量子ビットの数が50程度のマシンを開発し、クラウドサービスを通じて企業や研究者らが利用できます。米国ではマイクロソフトやスタートアップ企業も別の方式で開発を進めています。

注目されるのは中国の動きです。日本でも有名なアリババは2018年からIBMと同様のクラウドサービスを始めました。国を挙げて開発に取り組んでいるようです。

――私たちの生活にも影響はあるのですか。

本格的な実用化は10年以上先になるでしょうが、量子ビットの数が少なくても高速計算を実現できる分野はあります。「組み合わせ最適化」と呼ばれる問題です。簡単な例ではセールスマンがいくつもの訪問先を回るときに、最も少ない移動距離を求めることが当てはまります。

この延長で物流の効率化や交通渋滞の解消などへの応用が期待されます。また金融商品の最適なポートフォリオを実現したり、医薬品や新素材の開発にも応用したりできます。人工知能(AI)の性能向上にも役立つはずです。

ただ、現在のインターネット社会は様々な暗号技術の上に成り立っています。量子コンピューターが実用化されると、こうした暗号が解読されてしまうという懸念の声も聞かれます。まだ先の話ですが、実用化に向けては解決しなければいけない課題も残されているようです。

ちょっとウンチク

方式様々 生き残りへ競争

一口に量子コンピューターといっても、様々な方式が研究されており、どれが生き残るのかも注目だ。グーグルやIBMのマシンは「量子ゲート方式」と呼ばれ、様々な種類の計算問題を超高速で解くことを目指している。一方カナダのDウエーブ・システムズがいち早く発表した「量子アニーリング方式」では得意な計算の種類が限られる。

量子コンピューターでは計算を担う量子ビットをいかに安定して動かすかが課題。量子ビットをグーグルのように超電導回路ではなく、光回路や特殊な結晶で作るなど様々な方法が国内外で研究されている。(編集委員 吉川和輝)

■今回のニッキィ
 浜田 康子さん フリーランスで英語の通訳やキャリアカウンセラーとして活動中。以前から音楽に関心があり、ピアノ歴は長いが、「最近は沖縄の伝統楽器、三線(さんしん)にはまっています」
 菅原 直美さん 駐車場管理会社勤務。学生時代からフルートを続け、最近は母校で開催された演奏会にも参加した。「新しい先生にフォームから指導してもらい、いい音がでるようになりました」

[日本経済新聞夕刊 2019年12月16日付]

「ニッキィの大疑問」は原則月曜掲載です。

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