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少子高齢化問題の解決法として移民の受け入れが語られる。しかし、どれだけの日本人に外国人と軒を接して暮らした経験があるだろう。ブラジル人街で有名な群馬県大泉町などと並び、定住外国人が多い愛知県下の町を、移民受け入れの先進地として取材した。

熱心に生徒を教えるロド先生

熱心に生徒を教えるロド先生

愛知県豊田市立保見中学校は全校生徒の3分の1が外国籍だ。「ロド先生」と呼ばれて慕われている教師の伊木ロドリゴさん(26)も日系3世だ。ブラジルで生まれ、10歳のとき、出稼ぎに来た両親に連れられて愛知県豊川市に移り住んだ。ゼロから日本語を苦労して習得し、日本の大学を卒業して教員となった。日系ブラジル人の教師は、同人口が多い愛知県でもめずらしい。

教師という仕事は外国人にはハードルが高い。それを目指すと決めたときのことをはっきりと覚えている。

突然の病

高校1年のときだった。体育の授業で柔道をしていたときに対戦相手の手が鼻に当たって鼻血が出た。その血が止まらない。調べてもらうと、白血病だった。

生きられる確率は50%と言われた。食べては吐き、食べては吐きを繰り返し、体力が次第に落ちていく。耐え難い痛みに耐え、死の恐怖と闘っていたある日、一つのニュースがテレビから流れてきた。

白血病の闘病生活は苦しかったが、あきらめなかった=ロドリゴさん提供

白血病の闘病生活は苦しかったが、あきらめなかった=ロドリゴさん提供

「自殺者が3万人を超えました」

日本の自殺率の高さは多くの国からすると異様に映る。「ブラジルは日本より貧しいのに自殺する人は多くない。ブラジルに比べてこんなに豊かな日本なのに、なんでそんなに自らの命を絶つ人が多いんだ」――。

それは怒りに近い感情だった。死にたくないともがいている自分のような人間がいるのに、自ら命を絶つ人がいるとは。

大人になった今は、死を選ぶのにも事情があることが理解できる。しかし、16歳だった当時は「簡単に死ぬんじゃない」と思った。もし自分が死から逃れおおせたら、必ず教師になり、未来を担う若者たちに、命の尊さや、諦めないことの大切さを教えようと心に決めた。

病魔を克服できたのはつらい時期を乗り越えた経験があったからだという。

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