聴力低下にこれ 最強の「聞こえサポート」グッズ

2013/4/4

シニアの道具箱

「最近、話し相手の声が聞き取りにくくなってきた」「テレビの音量をいつの間にか大きくしている」--。静かに忍び寄る「聞こえ」の変化に気づいて、がく然としたことはないだろうか。「いざとなったら、補聴器という最後のとりでがあるさ。それまでは少しぐらい不自由でも仕方ない。年相応なんだから」と、早々と白旗を揚げている人も多いのでは。だが、やせ我慢することはない。「聞こえ環境」を改善してくれる便利な機器がたくさんあるからだ。(ジャーナリスト・高嶋健夫)
手元スピーカーはシニアの頼もしい味方。パナソニックの「SC-MC10」のスピーカーは、ハンバーガーのようなユニークな形状ながら、クリアなデジタルステレオサウンドを出す

中高年には聞こえない「モスキート音」

4年ほど前に、東京都足立区が夜な夜な区内の公園にたむろして騒ぐ若者たちを排除するために、「若い人には聞こえるが、大人には聞こえない音」を発生させるという一風変わった撃退作戦を実行した。方法論の是非を含めて新聞・テレビでも話題になったので、ご記憶の方も多いだろう。

ここで使われたのが「モスキート音(サウンド)」と呼ばれる、蚊の羽音のような「キーン」という高周波の音で、一般的には1万7000Hz以上の超高周波音を指す。これが聞こえるか聞こえないかで、その人の年齢がある程度は推定できる。人の耳に音として聞こえる周波数は低い方が20Hz程度、高い方が2万Hzくらいまでの帯域といわれ、20歳前後をピークに加齢とともに聞こえる範囲(可聴域)が狭まり、特に1万Hzを超える高周波帯域が段々と聞き取りにくくなってくる。

このため、モスキート音を流せば、それが聞こえる若者には不快でいたたまれなくなる半面、聞こえない一定年齢以上の人、とりわけ中高年はへっちゃら、という現象が起きることになるわけだ。

シニアとしては喜ぶべきか悲しむべきかよくわからないこのお話、「聞こえ」の変化の一端を教えてくれる(自覚させてくれる)話題と受け止めればいいと思う。自分では聞こえているつもりでも、実際はきちんと聞こえていない、という場合もあるのだ。

人の聞こえの仕組みは複雑で、日常生活における聞こえの状態は音の高さ以外にも、音の強さ(大きさ)、音の種類、周囲の環境などが相互に影響し合って、同じ人でも聞こえ方はその時々で異なってくるし、個人差も大きい。だが、ざっくり言って「年齢とともにはっきりと聞き取れる範囲が少しずつ狭くなってくる」ことだけはどうやら間違いない。

そのことを冷静に受け入れたうえで、上手に対策を講じていけば、「聞こえ」に関する悩みはかなりの部分を解消できるはず。今回はそんな視点で“聞こえサポート機器”を紹介していこう。

■テレビの音を聞きやすくする「手元スピーカー

シニアから一番よく聞くのは「テレビの音」に関する悩み。現在56歳の筆者自身にとっても、目下の最大の関心事の一つである。50を過ぎた頃から、ドラマなどを見ている時に「今なんて言った?」と隣にいる家人に聞き返す場面が増えた。知らず知らずのうちにリモコンボタンを押し続け、以前よりかなり大きな音で聞いていることに気づいて焦ることも度々だ。

同じ悩みを持つシニアには「手元スピーカー」をお勧めする。読んで字の如く、テレビにつないで手元に置く小型スピーカーのこと。若い人にはおよそ必要のないニッチ商品ではある。実は筆者も数年前、今年81歳になった母親が自室のテレビ用に自分で買ってきた時に初めて「なるほど、こういう物があるんだ」と知った次第。聞けば、同年輩のお友だちに教えてもらったという。

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