まるで写真集 「大人も読みたくなる図鑑」ベスト15
写真集のように色鮮やかで、知的好奇心をくすぐる図鑑が注目を集めている。地層、鉱石、元素などテーマは専門的だが、視覚に訴えるデザインに工夫を凝らし、気軽に広げて楽しめる本が多い。大人も読みたくなるお薦めの図鑑を専門家に選んでもらった。
元素の姿、鮮やかに
「記号ではなく視覚で楽しめる。女性や子どもにも人気」(野沢佳代さん)、「科学の知識が無くても魅了される」(生武正基さん)
(1)セオドア・グレイ(著)、若林文高(監修)(2)創元社(3)3990円(4)2010年
化石写真など3000点
「博物館が1冊にまとまったようなボリューム感」(浜本茂さん)、「進化の長い歴史を見渡すことができる」(大河雅奈さん)
(1)マイケル・J・ベントン他(監修)(2)河出書房新社(3)9975円(4)10年
100種類の雲、一冊に
「空を眺めてのんびり過ごせる本」(井東順一さん)
(1)村井昭夫・鵜山義晃(ともに文と写真)(2)草思社(3)1995円(4)11年
ビッグバンからたどる歴史
「読み物感覚で、地球や歴史に興味を持つきっかけとなれる本」(佐藤貴子さん)
(1)クリストファー・ロイド(著)(2)文芸春秋(3)3140円(4)12年
地形・地層から地球を知る
「地球のダイナミックさが伝わる」(福井啓介さん)
(1)白尾元理(写真)、清川昌一(解説)(2)岩波書店(3)4620円(4)12年
鉱物から菌類、草花、哺乳類など約5000種を図解する。生物の多様性が実感できる。
「地球上に散らばる鮮やかな宝石を詰め込んだよう」(生武さん)
(1)スミソニアン協会(監修)(2)東京書籍(3)9975円(4)12年
国内で人が住む全ての島を網羅。名産品や島独特の祭りなどを紹介。アクセス情報や簡単な地図があり旅行ガイドとしても役立つ。
「色々な島に人々の生活はあるのだと気付かされる」(大森慧さん)
(1)加藤庸二(著)(2)新星出版社(3)2625円(4)10年
瑪瑙(めのう)や石灰岩など380点の石の断面集。味気ないと思われがちな石の隠れた一面を発見できる。
「しま模様や目玉模様など、鉱物の持つ表情の豊かさに圧倒される」(浜本さん)
(1)山田英春(著)(2)創元社(3)3990円(4)12年
船の底には貯蔵庫、飛行機の奥には乗務員の仮眠室。断面をのぞくと、色々な秘密が分かる。
「隅から隅まで楽しめる密度の濃さ」(吉野敏弘さん)
(1)スティーヴン・ビースティー(画)、リチャード・プラット(文)(2)岩波書店(3)2730円(4)1992年
生息地や毒性の強さを解説。食べた直後の治療方法も載せてあり、山歩きのときにも役立つ。赤や緑など珍しい色のキノコも掲載。
「毒々しさがリアルに表現されている」(奥沢朋代さん)
(1)長沢栄史(監修)(2)学研教育出版(3)1995円(4)09年(増補改訂版)
(1)アダム・ハート=デイヴィス(総監修)、日暮雅通(監訳)(2)河出書房新社(3)1万4490円(4)11年
12位 骨から見る生物の進化 260ポイント
(1)ジャン=バティスト・ド・パナフィユー(著)、パトリック・グリ(写真)(2)河出書房新社(3)9975円(4)08年
13位 世界動物大図鑑 250ポイント
(1)デイヴィッド・バーニー(総編集)、日高敏隆(日本語版総監修)(2)ネコ・パブリッシング(3)1万500円(4)04年
14位 日本帰化植物写真図鑑 170ポイント
(1)清水矩宏・広田伸七・森田弘彦(編・著)(2)全国農村教育協会(3)4515円(4)01年(改訂版)
15位 CORE MEMORY(ヴィンテージコンピュータの美) 160ポイント
(1)マーク・リチャーズ(写真)、ジョン・アルダーマン(文)(2)オライリー・ジャパン(3)3570円(4)08年
表の見方 数字は選者の評価を点数に換算。(1)著者、監修者など(2)出版元(3)税込み価格(4)初版年。
切り口多彩 大人も魅了
出版科学研究所によると、図鑑の2011年の推定発行部数は195万部で、前年と比べて6割増えた。ランキングで1位になった「世界で一番美しい元素図鑑」など「鮮明な写真を前面に出した図鑑がブームをけん引した」(三省堂書店)。
見た目だけでなく、専門知識の説明が充実したものが多いのも特徴だ。5位の「地球全史」は地層や地形の写真を中心に掲載する一方で「アカデミックな知識に触れたい人向けに、あまり知られていないことを解説した文を後半のぺージに盛り込んだ」と、編集を担当した岩波書店の首藤英児さんは説明する。
子ども向けの図鑑も新しい切り口の本が増えている。例えば小学館の「くらべる図鑑シリーズ」は、世界各地の樹木と通天閣の高さ、鯨と新幹線の重さ、など様々なものを比べている。編集を担当した広野篤さんは「子どもの『なんでだろう』を最大限引き出すため、恐竜や昆虫などのジャンルの垣根を越えた1冊にした」と狙いを話す。
このほか、子ども向けではDVDの映像解説がついた「動く図鑑MOVEシリーズ」(講談社)、質問に答える形式で解説する「なぜ?の図鑑」(学研教育出版)などが好評だ。
◇ ◇ ◇
調査の方法 専門家の推薦をもとに大人が楽しめる図鑑を28冊選び、その中で選者に順位付けしてもらった。自然科学などの専門知識を持たなくても理解でき、何度も読み返したくなる構成であることを重視した。選者は以下の通り(敬称略、五十音順)。
生武正基(紀伊国屋書店梅田本店)▽井東順一(図書館振興財団選書員)▽大河雅奈(北陸先端科学技術大学院大学)▽大森慧(ヴィレッジヴァンガード渋谷宇田川店)▽奥沢朋代(三省堂書店神保町本店)▽佐藤貴子(リブロ池袋本店)▽野沢佳代(八重洲ブックセンター本店)▽浜本茂(「本の雑誌」編集長)▽福井啓介(筑波大学付属図書館)▽吉野敏弘(「大人の科学マガジン」編集部)
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