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「アレキサンダー・ワン」生んだ民族大移動 NYファッション前線(前編)

2013/3/9

アジア系デザイナーで初めてフランスのトップブランド「バレンシアガ」に登用されたアレキサンダー・ワン(29)。その才能を見いだしたのは日本出身の“スカウト”……。アジア系がファッションシーンのトップランナーとして躍り出てきた。2月7日から14日にかけて開かれた2013年秋冬シーズンのニューヨークファッションウイークから「アジアの時代」の息吹を届けよう。

■仏老舗ブランドに初めてアジア系デザイナー

日常でも着られる服が多いのがアレキサンダー・ワンの魅力

2月9日夕方、1921年完成のルネサンス風内装で有名な元船舶会社のビルに、映画「ロッキー3」のテーマ曲「Eyes of the Tiger」がとどろいた。ワンのショーの始まりだ。

曲は“ロック”でも、モデルがまとう服は“シック”。ウールと毛皮を贅沢に使いつつもシンプルで、グレー、黒、赤茶、白、ネイビー……、モノトーンで統一したライン。最後に登場した本人も、モデルが着ていたようなルースなニットにジーンズだった。

恒例のニューヨークファッションウイークの話題をさらったワンはニット作品から出発し、ストリート系ファッションで名を上げた。

畑違いのフェミニンなハイブランドで知られるフランスの老舗「バレンシアガ」のクリエーティブディレクターに抜てきされ、業界をあっと言わせたのが昨秋。その実力と勢いを見せつけた。

■ワンをみいだしたステラ・石井さん

アレキサンダー・ワン

デビューは07年。彼を最初に売り出したのは日本生まれで、新人を主に扱うショールーム「The News」をニューヨークに開いているステラ・石井さんだ。

「sacai」の阿部千登勢さんらを世に送り出したことで知られる石井さんのもとに、20歳そこそこだったワンが兄夫婦と3人で「僕のデザインをどう思う?」と相談に来た。

「ストーリーがあって、素晴らしかった。とにかく明るくて社交的。何も怖がらなくて、引き込まれる性格だった」と石井さんは振り返る。

「ジェイソン・ウー」はミシェル・オバマ米大統領夫人のお気に入り(2月21日、ワシントンで行われた2期目の就任パーティー)=共同

ファッション界のフロントランナーとなったアジア系デザイナーはワンだけではない。先月の大統領就任式でファーストレディーのミッシェル・オバマが選んだドレスはジェイソン・ウー。1期目の就任式に続く“お召し”となった。ほかにもフィリップ・リム、デレク・ラムと、アジア系が今をときめく。

アジア系の台頭を支えるのは親族の強固なつながりや民族的なコミュニティーの強さだ。デザイナーとして成功するには造形や色彩などの美的センスだけではだめで、実業的センスが不可欠だ。

経営面でワンを支えるのは母、実兄とブランド運営会社の社長を務める義姉。典型的な中華系の一族経営だ。

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