「アマゾンによる死」避けるには 小売り、どう変身?

返品無料や接客なしなど、ネット通販ならではの特徴が支持されているところもある。 写真はイメージ
返品無料や接客なしなど、ネット通販ならではの特徴が支持されているところもある。 写真はイメージ

デジタル化が私たちの生活を大きく変えているけど、小売りの世界では何が起きているのかな。ネット通販の広がりは街中の実店舗にどのような影響を与えているのかな。

デジタル化が小売りをどう変えるかなどについて、正木めぐみさん(53)と吉野久子さん(34)が田中陽編集委員に話を聞いた。

――なぜネット通販は広がったのでしょうか。

「賢い買い物」の定義が変わったと考えています。専業主婦が多い時代は時間をかけてでも安い商品を買うことに意味がありましたが、今は共働きが増え、買い物など家事に時間をかけられません。店に行く時間を減らすことが意味を持つようになりました。

デジタル化は消費者の意識も変えました。かつてはメーカーや小売店側の持つ情報量が圧倒的に多く、消費者は価格の安さなど限られた情報でしか価値を判断できませんでした。しかし今では消費者はSNS(交流サイト)を通じて、対等な情報量を得られるし、自ら商品情報を発信することもできます。そうなると従来以上に好き嫌いや信頼といった主観的な価値が大きな意味を持つようになります。

ネット通販企業が新たな顧客体験を次々に打ち出したことも大きいと思います。典型は米アマゾン・ドット・コムでしょう。日本では2000年11年に書籍から取り扱いを始め、家電、ファッション、食料などへと取扱商品を増やしていきました。注文後に短時間で自宅まで商品が届けられたり、購入履歴データに基づいて次の商品を推薦されたりするなど、これまでにない購買体験が特徴です。

――街中にある店舗にはどんな影響がありますか。

米国では「デス・バイ・アマゾン(アマゾンによる死)」という言葉があります。アマゾンの巨大化が既存の小売業者を追い込んでいる状況を示しています。例えば18年10月には、米小売業の老舗であるシアーズ・ホールディングスが法的整理になりました。また米小売り最大手のウォルマートも実店舗ではかつての勢いはなく、ネット事業にも注力するようになりました。

その一方で、米宝飾品大手ティファニーの実店舗の人気は今も健在です。実店舗で買い物をする際のおもてなしや、装飾などで使われるコーポレートカラーの「ティファニーブルー」のような独自の世界観が人気の背景にあります。日本でもファーストリテイリングの「ユニクロ」や良品計画の「無印良品」の実店舗に入れば、看板がなくても陳列方法、色遣い、品ぞろえなどで店名を言い当てることができます。結局、実店舗の差異化が不十分で、安さばかりを訴える小売業は苦戦を強いられています。