コクヨが新たに投入した文具シリーズ「KOKUYO ME」。ボールペンやノート、テープのりなどの色、素材感、加工にこだわり、シリーズでトータルコーディネートできるデザインにしたのが特徴だ。こうした商品を開発した裏には、企業の文具調達の変化や働き方改革への対応がある。

「KOKUYO ME」はさまざまな文具を自分なりにコーディネートして楽しんでもらうのがコンセプト
「KOKUYO ME」はさまざまな文具を自分なりにコーディネートして楽しんでもらうのがコンセプト

 KOKUYO MEはコクヨが2019年10月16日に発売した文具の新ブランド。「Life Accessories」をコンセプトに色や素材感、加工にこだわったノートやペン、ペンケース、テープのりなどをラインアップする。単体ではなく、トータルコーディネートして使うことを想定している。コクヨのステーショナリー事業本部プロモーション推進部メディアグループの吉村茉莉氏は「これだけの文具を統一したデザインでそろえられるのは、総合文具メーカーのコクヨならでは」と話す。

コーディネートできる文具として、細部のデザインや質感にもこだわる。同じシャープペンシルでも本体の色によってペン先やクリップ部分の色を変えている
コーディネートできる文具として、細部のデザインや質感にもこだわる。同じシャープペンシルでも本体の色によってペン先やクリップ部分の色を変えている

企業の集中購買が減り、個人で買う時代に

 KOKUYO ME開発の背景にあるのは、リーマン・ショック以降のオフィス文具市場の変化だ。それまで文具は各企業の総務部などがまとめて購入し、社員はそれを利用していた。ところがリーマン・ショックによる不況で企業が文具の購入を抑制。社員は自分で文具を購入するようになった。その結果、「どうせなら好きなものを買おうという人が増えた」(吉村氏)という。

 ただ、「22~36歳のミレニアル世代、37~42歳のゼニアル世代は、価格の安さやぱっと見のデザインでは購入しない。流行よりも自分らしさを表現できる商品を選ぶ」と吉村氏。文具にもアクセサリーのような自己表現の要素が求められるようになっているという。

ノートの表紙にはテクスチャーを加え、色に奥行きを与えた
ノートの表紙にはテクスチャーを加え、色に奥行きを与えた

 加えて、働き方改革だ。企業でフリーアドレス制やテレワークの導入が進むと、社内で席を移動したり、シェアオフィスで仕事したりする機会が多くなる。「持ち物を人に見られる場面が増えたこともデザインなどへの意識を高めることにつながっている」(吉村氏)。

 KOKUYO MEの開発に当たっては、ボールペンやノート、ペンケースなど商品カテゴリーごとに縦割りになっている部署を横断するタスクプロジェクトを結成。連携しながらデザインや色味などを調整した。「ペンやノートなど商品によって使う素材も、製造する国や工場も異なる。同じ色を出すには加工にかなり気を使った」(吉村氏)という。

 また、開発の過程では、デザイナーの佐藤オオキ氏率いるnendo(東京・港)と協業し、接着・粘着用品の新ブランド「GLOO(グルー)」(19年1月に発売)を開発した経験も役立った。「nendoとのプロジェクトでは、細部まで妥協しない姿勢を学び、加工のノウハウを培った。社員の意識が変わったことも、KOKUYO MEに生きていると思う」と吉村氏は話す。

 今後は、3カ月ごとに新商品を投入していく方針だ。「文具はカタログビジネスなので、新商品の発売は通常1年スパン。でも、KOKUYO MEはファッションと同等のペースで展開したい」(吉村氏)。これは文具店の商品棚を確保するうえでも有効だという。「新しい商品を次々と出すことで、店舗にとっても『これを入荷しておけばトレンド感を演出できる』という製品にしていきたい」(吉村氏)。

 ブランド立ち上げと同時に店舗向けに用意した陳列棚にも第2弾商品を置くスペースは準備済み。年明けに発売する予定だ。

(写真提供/コクヨ)

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