強いコネは足かせに 転職では弱いつながりこそ役立つ第46回 スモールワールド仮説

転職に役立つ情報をどこから得るか?

この話をすると「そんな薄いつながりが何の役に立つの?」と疑問を抱く方が出てきます。「自分しか持っていない強いコネこそが重要」と思う方もいるでしょう。実は、場面によっては弱いつながりのほうが役に立つこともあるのです。

社会学者、M・グラノヴェッターが「弱い紐帯」の理論を提唱しています。新しくて価値のある情報は、家族や仲間といった強いつながりよりも、ちょっとした知り合いやその知り合いなど、弱いつながりからもたらされることが多い、というのです。

よく引き合いに出されるのが転職です。さまざまな調査によると、弱い紐帯からもたらされた情報のほうが職を得るのに役立ち、転職後の満足度も高いことが知られています。

かつて私もそうでした。会社を辞めて独立した際に仕事を回してくれたのは、すべて初対面の人。かつての仲間や友人は、励ましてはくれたものの、まったくビジネスにはつながりませんでした。

理由はこうです。強いつながりの間柄では、似かよった情報を密度濃く共有しているため、情報の重複や無駄が多く出てしまいます。人脈にもかなりカブリが発生します。そのため、かける手間や時間の割に、新たな情報が入りにくい面があります。

対する弱いつながりでは、共有する情報が減り、重複が少なくなります。各々が持つネットワークのカブリも発生しにくくなります。新たな情報を得るには効率がよいのです。

強いつながりだけでは心もとない

職場の仲間など、強いつながりの中で話をするのは楽しいものです。共有している情報が話題の中心になり、共感性が高くなります。ところが、共有できていない話や、誰も持っていない情報の探索が疎かになります。下手をすると同じ話を反すうするだけになります。

それに、長く同じ組織にいると、誰がどんな情報や能力を持っているか、仕事の癖や好みまで分かるようになります。強いつながりを駆使すれば、大抵の仕事はそつなくこなすことができます。「仕事ができる」と言われ、本人もその気になります。

ところが、そんなやり方は強いつながりの中でしか通用せず、本当の能力やスキルが身についたと言えません。積極的に弱いつながりを自らつくり、仕事やキャリアに役立てていかなければ、いざというときに路頭に迷うだけになります。

幸い、SNS、異業種交流会、朝活など、ネットワークづくりの機会が飛躍的に増え、弱いつながりを広げるチャンスが拡大しています。最近では、副業やアルバイトを認める会社もたくさんあり、本人のみならず社内の弱いつながりを広げるのに効果があります。

スモールワールド化した現代では、世界中の誰にでもアクセスでき、誰とでも一緒に仕事や活動ができるようになりました。にもかかわらず、我々の意識が追いつかず、強いつながりの外に出るのをためらったり、弱いつながり同士で孤立と分断を強めてしまっていたりします。最高の資源であるネットワークをいかに活用するか、個人も企業も問われているのだと思います。

堀公俊
日本ファシリテーション協会フェロー。大阪大学大学院工学研究科修了。大手精密機器メーカーで商品開発や経営企画に従事。1995年からファシリテーション活動を展開。2003年に日本ファシリテーション協会を設立、研究会や講演活動を通じて普及・啓発に努める。著書に「ファシリテーション入門第2版」「会議を変えるワンフレーズ」など。

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