「国民総脱現金化」の流れを加速させる上で、従来の手段では“抜け落ちたピース”だった未成年層の取り込みは欠かせない。ここに来て、安全安心を担保しながら子どもたちをキャッシュレスへといざなう取り組みがようやく出てきている。キーワードは「親子の信頼関係」だ。最新ツールを駆使する今どきの子どもたちの脱現金事情は一体どうなっているのか。

都内在住の竹村家では、娘2人にお小遣いをLINE Payで送金するなど、積極的にキャッシュレスを使わせることで今どきのお金の使い方を学ばせている
都内在住の竹村家では、娘2人にお小遣いをLINE Payで送金するなど、積極的にキャッシュレスを使わせることで今どきのお金の使い方を学ばせている

 「お小遣いは、お父さんが毎月スマホに送ってくれている。なんだか、ATMがいつも自分の手の中にあるような感覚」。都内在住で高校2年生の竹村花夏さんと中学3年生の千花さん。姉妹にとってキャッシュレスは、店舗での買い物だけでなく、もはや家族間のお金のやり取りも支えてくれる当たり前の存在になっている。

「親がキャッシュレス、だから私もキャッシュレス」

 きっかけは、娘たちからの働きかけではない。父である竹村弘樹氏からの提案だった。「買い物はほとんどクレジットカード。現金はごくわずかしか持ち歩かないので、月に1度の娘たちのお小遣い日に持ち合わせが無いことがしばしば」(竹村氏)だった。おかげでお小遣いを渡すのが遅れたり、忘れたりしてしまうことがあり、娘たちによくせっつかれていた。

 どうしたものかと悩んでひらめいたのが、キャッシュレス決済「LINE Pay」が備えている送金機能を活用することだった。竹村氏は会計システム開発会社ディーバ(東京・港)で副社長を務めることもあり、デジタル活用はお手の物。クレジットカードは一般に18歳以上でないと作れないが、LINE Payの場合、未成年でもチャージした残高を使って1円〜10万円の範囲で決済できることに気づいた。未成年でも本人確認すれば、LINEの友だち同士で送金可能になる。「親子間でも個人間送金は瞬時に終わるし、手数料もかからない。これだと思った」(竹村氏)。

 早速、娘たちが最新スマートフォンに機種変更したタイミングで提案。花夏さんや千花さんも興味を示したことから、LINE Payを設定し、竹村家ではキャッシュレスによるお小遣い制がスタートした。もう2年以上運用している。

 個人間送金の手続きは実に簡単だ。LINEのウォレットタブを開いて「送金」を選択し、あとは送りたい相手を選んで金額を入力するだけ。1分もかからないので、通勤中などにさっと済ませられる。「(出張先などしばらく)離れたところにいても瞬時に送金できる。加えて履歴が残るので、お小遣いの渡し忘れもなくなった」(竹村氏)。年ごろの娘たちは使い方に困ったら何でも相談してくるそうで、キャッシュレスが親と子の間の良好な関係作りに一役買っている。

高校2年生の竹村花夏さん(左)と中学3年生の千花さん(中)、父である竹村弘樹氏(右)
高校2年生の竹村花夏さん(左)と中学3年生の千花さん(中)、父である竹村弘樹氏(右)

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