仕事と休暇を両立、ワーケーションは普及する?

――先進的な事例はありますか。

日本航空は17年度に試験的に実施し、18年度から正式に導入しました。1日1時間以上働けばよいスーパーフレックス制度と併用できます。帰省先やリゾート地から1時間程度、WEB会議に参加する社員もいるそうです。会議のために休暇を切り上げる必要がありません。18年度は約170人が利用しました。

ワーケーションの受け皿となる観光地や地方も積極的に動き出しています。和歌山県は8月に首都圏の親子を対象に2泊3日の体験ツアーを実施しました。親が働いている間、子供たちは南紀白浜や串本の水族館などで夏休みを楽しんだそうです。

少子化が深刻な地方にとってワーケーションは都市との交流人口を増やすチャンスです。11月には誘致に熱心な自治体が協議会を発足させる予定です。和歌山、長野の両県のほか、京都府舞鶴市や北海道北見市など40を超える自治体が参加する見通しです。

――さらに普及するにはどんな課題がありますか。

一番の懸念は仕事と休暇の線引きです。どこでも、いつでも働けるようになったからと、休暇先での就労を当たり前のように求められては本末転倒です。

サントリーグループの主要各社はテレワークに積極的に取り組んでいますが、休暇中のテレワークは原則禁止しています。先に挙げた日航など他の企業でも、休暇中の勤務日数・時間に上限を設けるなど工夫し、仕事が休暇を侵食しないようにしています。

フランスでは勤務時間外や休日の業務連絡を拒否できる「つながらない権利」を認める法律が17年に施行されました。日本人は勤勉で働き過ぎの傾向が強いといわれています。「つながらない権利」を職場で周知するなど歯止めが必要です。正式に制度として導入するなら職場以外の場所で働く従業員の勤務状況などをちゃんと把握し、報酬も適切に支払うルールも定めるべきです。

ちょっとウンチク 発想刺激、生産性も向上

非日常的な空間は脳を活性化する効果もある。野村総合研究所は徳島県三好市で定期的にワーケーションを実施している。心身のリフレッシュとイノベーションの萌芽(ほうが)を期待する。都心で働くシステム技術者から希望者を募り、5人前後が2週間滞在する。

レンタルオフィスは築100年以上の古民家を改装したもの。いつもの業務に加え、新プロジェクトの立案など創造性が求められる仕事を持ち込む社員が多いという。「集中してじっくり考えられる分、新しい発想が浮かびやすい」と好評だ。ワーケーションは生産性向上にも一役買っている。(編集委員 石塚由紀夫)

■今回のニッキィ
福島愛さん 6月に大手メーカーから外資系金融会社に転職。退社時刻が早くなったので週1~2回、仕事帰りにスポーツジムに通っている。「汗を流した後のビールの味は格別です」
宮原千枝さん 情報通信企業勤務。6歳で始めた書道は師範の免許を持つ腕前。2年ほど前から中国語を学んでいる。「駅や店で流れる中国語の案内放送が聞き取れると、うれしくなります」

[日本経済新聞夕刊 2019年10月7日付]

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