40代後半から始める 要介護にならない健康法名戸ヶ谷病院院長 大江隆史氏

日本人の寿命は延びているが、大切なのは、支援や介護がなくても日常生活が営める期間である「健康寿命」を延ばすことだ。しかし、骨や関節などの運動器障害が原因となって自立度が低下し、要介護状態になる高齢者が増えている。名戸ヶ谷病院(千葉県柏市)院長で、東大整形外科非常勤講師の大江隆史氏に、高齢期の運動器障害とその防止策について聞いた。
おおえ・たかし 名戸ヶ谷病院(千葉県柏市)院長、東大整形外科非常勤講師。京都府丹後に生まれる。東京大学医学部卒業。1985年東大整形外科入局、茨城県立中央病院、旭中央病院、静岡厚生病院、焼津市立病院整形外科で整形外科を研修し、92年東大整形外科助手。94年東大整形外科医局長。95年より名戸ヶ谷病院勤務。2004年より東京大学整形外科非常勤講師。12年名戸ヶ谷病院院長。 08年5月、日本ロコモティブシンドローム研究会を設立、委員長。10年8月、ロコモチャレンジ!推進協議会副委員長。

骨や関節などの手入れ怠ると「要介護」に

――健康でいるための基本になる運動機能の維持が、大江さんの研究テーマですね。

大江 研究をするとともに、キャンペーンもしています。高齢の方が健康寿命を延ばしてほしいと思うからです。人々が自立できなくなる原因を調べてみると、メタボ(メタボリックシンドローム、内臓脂肪症候群)の結果である脳血管障害などはよく知られていますが、骨や関節の具合が悪くなることがきっかけになることが多いのはあまり知られていません。

介護保険で、「要介護」に認定される人たちの4分の1が骨や関節、神経などの運動器の障害で要介護になっています。また、少し軽い「要支援」に認定される人たちの3割は運動器の障害が原因です。こうした現実に多くの方が気づいていない。つまり、何ら対策をとっていないので、「骨や関節などの運動器を手入れしないでおいておくと、その先に要介護状態、最悪の場合は寝たきりの状態がありますよ」と訴えるキャンペーンをしているわけです。

知らないうちに運動器が衰える「ロコモ症候群」

――高齢者は転んでも、「ちょっと転んでしまった」と笑って済ますことが多いようですね。それがまずいのですね。

大江 転ぶ原因がすでに生じているから転ぶのですが、それに、あまり気づかないですね。気づかないうちに運動器が衰えていく。なるべく早く気づいて対策をとらないと大変なことになるので、我々は「ロコモティブシンドローム(ロコモ、運動器症候群)」という言葉や概念を考えて、キャンペーンをしています。

ロコモティブというのは「移動能力がある」という意味です。運動能力が衰えることをどうネーミングしようかと考えたときに、日本語で言うと移動能力の障害とか運動器の機能不全とかになるのですが、なるべく世の中で使ってもらえそうな言葉を選ぼうと、「ロコモティブシンドローム」と命名しました。

博報堂や整形外科学会と協力して告知活動

――名前までつくられたのですね。

大江 2007年に日本整形外科学会が、運動器の障害のために要介護状態になる危険性が高いということを知ってもらうために、ロコモティブシンドロームという言葉と概念を提唱したんです。また、私は「日本ロコモティブシンドローム研究会」をつくり、ロコモに関する研究と提言を行っています。整形外科学会が博報堂の協力を得てつくったのが「ロコモチャレンジ!推進協議会」です。そこを通じて企業や社会と協同してロコモの広報を推進しています。

――ロコモというのは良いネーミングですね。

大江 「メタボとロコモ」というように言ってもらえるように、命名しました。

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