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弱みにこそヒント クジャクの羽で知る新ビジネスの種 第44回 ハンディキャップ理論

2019/10/9

■野口英世と北里柴三郎、どちらが有名?

ご存じのように2024年からお札が新しくなり、千円札の肖像人物は野口英世から北里柴三郎に代わります。この2人、前回の変更のときも候補に上がり、野口英世に軍配が上がりました。

そう聞くと、「野口英世のほうが北里柴三郎より有名だから」と勘違いする方が少なくないようです。違うんです、お札を一新する目的である「偽造防止」の観点から、図柄が細かい肖像が選ばれただけなのです。でも、なぜ野口英世のほうが有名なのか、考えたことがありますか。

確かに、ネットに上がっている「偉人ランキング」を見ると、野口英世は科学者の中では断トツの1位。総合でも10位以内に確実に入る常連です。それに対して、北里柴三郎はだいたい圏外です。知名度という点では圧倒的な差があります。

ところが、業績の点では北里柴三郎が勝るというのは、素人の私でも分かります。ペスト菌や破傷風の研究に加えて、研究所(大学)を創設することで数々の研究者や業績を輩出しました。まさに「近代日本医学の父」であり、野口英世は門下生の一人になります。

野口英世も梅毒や黄熱病などの研究で世界的に認められました。ところが、後年になって否定されている研究もあって、医学への貢献となると北里柴三郎に及びません。

何より、数々のスキャンダルや不祥事を起こしており、学者としての資質に疑問符が投げかけられています。偉人と呼ぶには「人間性に難がある」と考える人が少なくありません。

となると、野口英世が世間で高く評価される理由は一つしか思いつきません。彼が、艱難辛苦(かんなんしんく)を乗り越えて出世をしたからです。ハンディキャップこそが彼を有名にしたのです。

■クジャクの羽はなぜあんなに美しいのか?

皆さんは、なぜクジャクがあのような華麗な尾羽を備えているか、ご存じでしょうか。答えは雌を惹きつけるためです。長くて重い尾羽は繁殖期の雄だけが持っており、立派になればなるほど雌にモテるわけです。

ではなぜ、雌はあの派手な羽に惹きつけられるのでしょうか。敵を倒す武器になる角(つの)か何かなら分かります。強さの証であり、強い雄の遺伝子が欲しい雌には、大いに魅力的に映ることでしょう。

ところが、きれいな羽があっても敵を倒せません。それどころか、闘うにはどう考えても邪魔です。しかも、クジャクを襲う天敵が来たら、目立ってしまい、一番に狙われます。立派な羽が重荷になり、逃げるのも難儀します。どう見ても生存には不利な点ばかりです。

にもかかわらず、圧倒的なハンディキャップに打ち勝って、立派に生き抜いている。これこそ強い雄であることの証であり、それをアピールしているのです。これが生物学者A・ザハヴィが提唱する「ハンディキャップ理論」です。

これは、捕食者が近づいているのに挑発するかのように飛び跳ねるなど、多くの動物で見られます。ハンディキャップを逆手に取って「自分はすぐれた遺伝子を持っているというシグナルを送る」(エヤル・ヴィンター『愛と怒りの行動経済学』)、したたかな戦略の現れなのです。

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