採用戦略、大学への期待はどう変わっているのかリーディングカンパニー人事の視点

左から日本生命保険の今井孝之、キヤノンの橋本大介、サイバーエージェントの石田裕子、曽山哲人、カゴメの有沢正人の各氏
左から日本生命保険の今井孝之、キヤノンの橋本大介、サイバーエージェントの石田裕子、曽山哲人、カゴメの有沢正人の各氏

2020年以降の就活ルールの撤廃や通年採用など、採用シーンも新しい動きとともに大きな節目を迎えようとしている。今、企業人事はどのような採用戦略を考え、大学にどんな期待をしているのか。日本のリーディンカンパニー4社に聞く。

近い将来の通年採用導入を予定
大学には、世の中の動きに敏感になってほしい。
カゴメ株式会社


25歳までは「新卒」
当社では社内公募制度などを創設し、従来のベクトル上にないような事業を模索しています。その意味で、アントレプレナーシップの持ち主は非常にほしい人材です。ただし、そういう市場価値の高い人材は、食品業界だけでなく他業界でも引っ張りだこ。通常のルートだけでは採用が難しくなってきました。そこで当社では、近い将来、新卒一括採用だけでなく、通年採用も取り入れ、採用形態の多様化を図る予定です。チャンスを新卒時の1度に限るより、25歳くらいまでは新卒扱いにし、しかも通年採用を行うほうが、企業にとってはいい人材を採用しやすいし、学生にとってもチャンスが増えて有利なはずですから。
当社が学生に求めるのは多様性。とにかく、いろいろな経験・バックグラウンドをもつ人に入社していただきたい。なかでも自己矛盾にぶつかり、苦労して乗り越えた人には興味があります。そういう人なら、周囲の多彩な人や企業を上手に巻き込みながらチームとして大きな成果を出したり、当社にイノベーションをもたらしたりできるでしょう。

電気・電子・AI等に期待
企業が学生に求めるスキル・知識は、ここ数年で大きく変化しました。当社でも新たなビジネスを手がけるため、従来のように食に関心をもたれている方はもちろん、新たな技術や電気・電子、またAI等の知識をもった方々も大歓迎です。新設の大学のなかには、社会の変化を反映した学部や講座を設けているところが目立ってきており、産業界としても心強く感じます。

大学の取り組みで学生も変わりつつある
最高人事責任者 常務執行役員 有沢正人氏
採用現場では新しい大学・学部からの応募が確実に増えてきています。特にグローバルに情報をキャッチする方法を学ぶ取り組みをしている国際関係の学部をもつ大学が目立ちます。ダイバーシティを理解し、自分自身も理解している。そういったグローバルな感覚を身につけた学生が増えているのを感じていますね。

◇  ◇  ◇

情報系人材の採用が拡大
「グローバル学部」にも注目
キヤノン株式会社


「情報」と「グローバル」
メーカーでは理系出身の学生を数多く採用していますが、なかでも、ここ数年積極採用しているのが、AIやIoTなどを学んだ情報系の学生です。当社もこれらの分野に注力しており、情報系の学部・研究科を卒業した学生に入社して欲しいですね。一方、当社の強みは質の高い製品を作りあげる力です。そのため、機械・電気といった分野で学ぶ学生にも期待しています。
文系出身者については、海外対応力が不可欠です。当社は以前から海外売上比率の高い企業ですが、今後も新興国を中心に海外展開はさらに加速するはず。そこで、従来の学部に加えグローバル系の学部を卒業した人にも注目しています。
情報系の人材もグローバル人材も、他社との奪い合いが激化しています。そこで当社では、プログラミングなどの専門知識を習得できる「ソフトウェア大学院」、若手社員を海外で研修させる「欧米/アジアトレーニー制度」といった仕組みを充実させ、学生にとって魅力ある企業となれるよう取り組みを続けているところです。

文理融合分野に期待
企業の現場では、回路設計とプログラミングなど、1人の技術者に幅広い役割を求めるケースが増えてきました。そこで「電気+情報」のように、複数の分野が融合した学部が増えてほしい。また、文理が融合した学部もいいですね。技術がわかる文系出身者、英語と交渉力に長けた理系出身者といった人材が大学で育っていくと、産業界としても大変ありがたいです。

多様化する大学の学び。人事も理解に努めています
人事部人事統括センター 課長 橋本大介氏
毎年400人を超える学生を採用していますが、昨今、理系ではAI、IoT、ロボティクスなどの分野、文系ではリベラルアーツ教育やグローバル系学部の学生も増え、事実、多様な領域を学ぶ学生が数多く入社しています。今後も学生の学びの理解に努め、社会と会社のニーズに応じた人材確保に取り組む必要性を感じています。

◇  ◇  ◇

採用基準はシンプルに「素直でいい人」
現在は「採用の民主化」に取り組む
株式会社サイバーエージェント


人事だけで採用しない
ネット業界は非常に産業構造の変化が激しい世界。一緒に変化をして一緒に新しいものをつくる、ということが人に求める一番大切な要件になります。そこで、求める人材像はただ一つ、「素直でいい人」。頑固で、従来の手法に固執するのではなく、現実をありのまま観察し、それに応じて柔軟に対応できる人材が活躍できるのです。
もともと採用というのは、経営トップや人事が採用基準や採用プロセスを決める、いわば『独裁的』なものです。当社ではそうしたやり方を廃し、各事業部内に採用チームを作り、それぞれが必要な人材を採るやり方に変えているのです。人事は採用に関わる広報活動と、各事業部のサポートを担当。一方、各事業部ではおのおのの事業戦略に基づき、どんな人材が何人欲しいか決めて採用活動に臨みます。
基準はシンプルですが、それが採用する学生に多様性を生んでいます。当社にはいろいろな社員がいて、彼らが「いいヤツ」と感じる相手は千差万別。また、事業部によって求める能力も大きく異なるからです。人事だけが採用をしていると、採用者の質は徐々に一律化していくというのがわれわれの考え。今後も、「現場が求める人材を採る」という道を、さらに進めるつもりです。

学生には高い目標を
大学は、視座を高め、視野を広める場所だと思います。そのためには、部活動で日本一を目指す、世界に開かれた学会で発表をするといった、高い目標をもち、全力でものごとにぶつかれる場を、できるだけ多く用意していただけると、産業界としても大変ありがたいです。

入試の変化にも期待!
執行役員 採用戦略本部 新卒採用責任者 石田裕子氏(左)
取締役人事統括 曽山哲人氏
入社後、社会において活躍するために必要な力を「学力の3要素」として重視する高大接続改革に注目しています。自発的に課題発見をし、その解決策を考える学習の場はもっと必要だと考えていますので、入試において、社会で必要な力を多面的・総合的に問う選抜が増え、大学入試テストで記述式が増えることに期待しています。

◇  ◇  ◇

理系出身者の採用が増加
大学には、多様な仕事があることを学生に伝えて欲しい
日本生命保険相互会社


ジョブ型採用を増やす
生命保険に対するお客様からのニーズは多様化する一方です。当社もそれに対応し、2019年4月に子会社「はなさく生命」を開業するなどチャネルの多角化を進めています。
こうしたなか、求める人材像も多様化しています。採用に注力したいのは理系出身者。当社では以前から、数学の知識をもつ専門家をアクチュアリー(保険数理士)としてジョブ型採用していましたが、2年前からは資産運用とITの領域でもジョブ型採用を実施。また、AIが入った営業職員用端末の開発など、新しい領域の仕事の担い手も求めています。
さらに、当社にはたくさんの企業や個人のお客様がいて、保険をお引き受けし、保険金や給付金をお支払いする中で様々なデータが蓄積されています。これらを分析すれば斬新で便利なサービスが生まれるかもしれません。ビッグデータなどを学んだ学生には活躍のチャンスが大いにあると思います。
グローバル化が進み、海外のグループ会社で働く機会も増えています。ただし、求めるのは語学力だけでありません。専門領域を深め、コミュニケーションに長けた人材を求めたいですね。

データ分析の学びに注目
生命保険会社と聞くと多くの学生は営業職を連想しますが、実は、アクチュアリーやデータ分析、統計担当者など、実に多彩な仕事が存在しています。大学には、学生に「世の中には多くの仕事がある」と伝え、各自の可能性を生かせる場を模索するよう指導していただきたいです。

大学と学生に期待したい「困難を乗り越えた経験」
人材開発部部長 ダイバーシティ推進部長兼人事部担当部長 今井孝之氏
当社は指定校を一切実施せず、大学名に関係ない採用選考をしています。期待しているのは、学生時代に「困難を乗り越えた経験」をもつ学生。各大学の産学連携やグローバル化といった改革のように、均一的でない経験を涵養する取り組みはぜひ力を入れていただきたいですね。

Text:白谷輝英 Photo:刑部友康

【PR】提供:リクルートマーケティングパートナーズ

スタディサプリ 大学の約束2019-2020

全国の大学48校の独自の取り組みと、育成方針についてレポート。学界、産業界の有識者・著名人インタビューも掲載し、さまざまな角度から「将来活躍する人材の育成と活用」について情報をお届けします。
出版 : リクルート
価格 : 463円+税

学生参加型コミュニティ 登録受付中
メールマガジン登録
大学の約束