通年採用の強化へ 人事の向き合い方とは ?人事のための人事講座(1) 1限目 服部泰宏氏に聞く

1時限目 科目 採用学講義
講師 服部泰宏氏
神戸大学 経営学研究科 准教授
はっとり・やすひろ●2009年神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程修了。滋賀大学経済学部専任講師、准教授、横浜国立大学大学院国際社会科学研究院准教授を経て、2018 年より現職。科学的な観点から日本企業の採用活動をとらえ直す採用学を提唱。著書に『採用学』(新潮社)がある。

通年採用の強化へ。人事の向き合い方とは ?

国や業界を超えた人材獲得競争が激しさを増す中、さらにここに来て、人事の採用担当者を不安にさせるのは、“通年採用の強化”という流れである。就職協定がありながらも、一部の企業で通年採用はすでに行われていたが、2019 年4 月、経団連と大学が通年採用の強化に合意したことで、長く続いてきた新卒一括採用という日本的慣行が大きく変わり始めた。

今後、人事はどのように採用活動を舵取りしていけばいいのか。採用プロセスや採用基準を変えていく必要があるのか。日本で「採用学」を立ち上げ、研究を続ける神戸大学准教授、服部泰宏氏が解説する。

「通年採用化」は、学生と企業にどのようなインパクトがありますか?

近年、新卒一括採用や面接を中心とした採用手法など、伝統的な日本型の採用活動に限界を感じ、多様な採用手法を取り入れる企業が増えてきました。

「通年採用」そのものは決して新しい採用手法というわけではありませんが、多様な採用手法の1つとして一部の企業で取り入れられるようになっていました。留学生や外国人の学生を採用しにくい、優秀な人材を獲得したいといった背景の中で、今後は通年採用が本格的に始まるだろうと多くの人が予見していましたが、それを企業、大学共に明確に宣言したということでしょう。

予見されていたこととはいえ、採用時期が通年になることは、学生にとっても企業にとってもインパクトが大きいのは間違いありません。

学生への影響では、通年採用によって採用の対象がぐんと広がり、学生に限定されなくなることが最も大きいでしょう。社会で経験を積んだ人々もライバルになるため、米国のような不安定な就職環境になっていくはずです。

一方、企業にとっては、採用活動の内定時期を定めて一斉に動く状態ではなくなります。採用時期が企業によってまちまちになり、学生は本当に納得するまで入社を決めなくなるため、獲得競争の激化と長期化が予測されます。候補者形成の段階で真に欲しい人材を見極め、その人たちをどう集めるのか、そして内定を出した人材をどうリテンションするのかが、採用活動におけるより大きな課題になります。

自社にとって本当に必要な能力をどう検討していくべき?

「真に欲しい人材」をどう見極めるのか。もちろん多くの企業が自社の欲しい人材の特定に注力していますが、そのほとんどが「コミュニケーション能力」を最も重視しているというのも事実です。

2011年に映画にもなったマイケル・ルイス著『マネーボール』から私たちが本当に学ぶべきことは、その組織なりの「優秀さを創り出す」ことの重要性です。オークランド・アスレチックスのビリー・ビーンは、一般的に優秀選手の基準として使われていた打率ではなく、出塁率という新たな評価基準に光を当てました。出塁率を基準とした選手の獲得は競合が少なく、比較的容易だったのです。

自社に真に必要な人材を見極めることは熾烈な人材獲得競争に参加せずとも、組織を勝利に導くことが可能であると示しています。必要な能力を特定したあと、それを採用時に見極めるべきかを検討する必要があります。

メンバーシップ型採用をうまく進めていくための方法とは?

まず変えるべきは、「優秀な人材は一定割合いるため、より多くの候補者を集めれば優秀な人材がより集まる」という発想。これが、多くの企業がエントリーを多く集めることに腐心する元凶です。リソースの有効活用という視点で見れば、真に自社に必要な人材のみに響くことを重視した採用広報を行う必要があります。

また、過度の面接偏重も問い直すべきでしょう。米国では、選考に当たって職種ごとの職務分析を精緻に行い、それをワークサンプル*といった方法で見極めるのが一般的です。日本でもこうした手法を取り入れるべきですが、職務主義を取る米国と異なり、日本はまだまだメンバーシップ型が主流です。インターンシップなどでできるだけ実務に近い環境を用意し、能力の見極めに加え、その組織のメンバーになりうるのかを見ることが求められます。

*ワークサンプル:実際に入社後に担当する仕事をさせて、その成果を見る方法

受ける側の学生の迷いをきちんと受け止めるには?

内定を出す時期が企業によってまちまちになれば、受ける側には迷いが生じるため、人事の舵取りは難しくなります。

ヒントがあるとすれば、若手の志向の変化です。彼らの話をよくよく聞くと、基本的には「安定した人生を送りたい」と考えていますが、バブル崩壊以降に生まれた彼らは、大企業に入ることだけでは安定できないとも思っています。

若い世代にとっての安定基盤とは、自分がもつスキルや技術。いかにそれを身につけられるかが、会社を選ぶ基準です。ですから、会社として提示すべきは、長い安定ではなく、「近い未来」の約束です。

入社後数年間で何をやって、何を身につけられるのかを見せる。成長の可能性を見せることが、最も強固なリテンションにつながるのです。

Text:入倉由理子 Photo:刑部友康、宮田昌彦

【PR】提供:リクルートマーケティングパートナーズ

スタディサプリ 大学の約束2019-2020

全国の大学48校の独自の取り組みと、育成方針についてレポート。学界、産業界の有識者・著名人インタビューも掲載し、さまざまな角度から「将来活躍する人材の育成と活用」について情報をお届けします。
出版 : リクルート
価格 : 463円+税

学生参加型コミュニティ 登録受付中
メールマガジン登録
大学の約束