――日銀の対応はどうですか。

政府・日銀もFRBの政策変更による円高圧力を警戒してきました。実際に7月末の米国の利下げ決定の後、8月に円相場は一時1ドル=104円台前半に上昇、1月以来の高値となりました。円高は株安要因となり、景気に負の作用を及ぼす懸念があります。

このため日銀は金融政策決定会合の後に出す声明文で、従来より緩和に前向きな姿勢を示すなどして、市場の円買いをけん制しています。ただ円高防止のために日本の当局にできることには、限界もあります。

まず金融緩和の余地はかなり狭くなっています。日銀の短期政策金利はマイナス0.1%で、長期金利(10年物国債利回り)もマイナスになっているからです。これ以上の利下げは金融機関の収益に打撃を及ぼすなど副作用が強まることも、軽視できません。政策金利(上限)が2%であるなど米国の利下げ余地は日本より大きく、緩和競争になると日本は不利です。

政府による外国為替市場での円売り介入も、かつてに比べ難しくなっています。米政権が他国の通貨安誘導に厳しい目を向けているからです。

――円高になると、暮らしにはどんな影響が出ますか。

海外旅行が割安になるなどの利点はありますが、やはり景気への悪影響が心配です。輸出企業の業績が悪化し、ボーナスが減るなどの動きが広がる可能性があるからです。消費増税によって消費にマイナスの影響が及びそうな状況だけに、景気に対してさらに打撃になる心配があります。

日銀が6月に調べたところ、日本の大企業・製造業が事業計画の前提とする想定為替相場は109円程度です。円がこれより高い水準で推移するなら業績悪化懸念が強まるだけに、要注意です。

ちょっとウンチク 米利下げ局面の円安も

米国の金利低下は円高圧力を生みやすいが、米利下げ局面でむしろ円安になることもある。今回を除く過去25年間の4回の米利下げ局面を振り返ると、うち2回は円相場が下落した。具体的には1995年7月~96年1月と2001年1月~03年6月の時期だ。ただし留意すべきなのはその期間に日本側が円売り介入や金融緩和を実施していたことだ。もちろん介入や緩和をしても円上昇が止まらないこともあるが、一定の意味は持つ。

一方、現在は介入が簡単でないし、日銀の追加緩和余地も限られる。日本の当局が、円高を警戒するのは自然だろう。

(編集委員 清水功哉)

■今回のニッキィ
小沢 麻里子さん 英語通訳・翻訳業。旅行先でパワースポットに足を延ばすようにしている。最近は長野県伊那市のゼロ磁場の分杭峠を訪れた。「りんとした雰囲気に身を置き、気分転換できる」
井原 幸子さん コンサルティング会社勤務。ダイエットのため出勤前に週2回程度、スポーツジムのランニングマシンなどで汗を流す。「ライブ鑑賞に備えるという目標があり、励みにしている」

[日本経済新聞夕刊 2019年9月30日付]

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