金融緩和競争、影響は? 円高なら景気へ打撃も
日銀は従来より緩和に前向きな姿勢を示しつつある(9月19日、金融政策決定会合後、記者会見する日銀の黒田総裁)
世界的に金融緩和の動きが強まっているようだわ。米連邦準備理事会(FRB)が7月、利下げに踏み切ったのがきっかけで、景気の下振れを未然に防ぎたいようね。生活への影響はどうなるのかな。
世界の政府や中央銀行の取り組みについて、井原幸子さん(46)と小沢麻里子さん(52)が清水功哉編集委員に聞いた。
――FRBは7月に続き、9月も金利の引き下げを決めました。
米中貿易戦争の激化で世界の貿易が滞るなど、グローバル経済は減速しています。その影響による国内景気の悪化に備えようというのが、FRBの基本的な考えです。
実際、回復を続けてきた米国の景気は減速しています。消費者物価上昇率についても、FRBが目標とする2%の安定的な実現が難しくなっています。そこで、いまのうちに金利を引き下げ、景気が後退局面に陥るのを防ごうとしているのです。経済を刺激できれば、物価にも上げ圧力がかかると判断しています。
トランプ米大統領も利下げを求める発言をしてきました。大統領選挙を来年に控え、再選のために景気悪化は防ぎたいと考えているからです。こうした政治面の動きもFRBの判断に影響を与えている可能性があります。
――米国だけでなく世界的に金融緩和が広がっています。
アジア、オセアニア、中南米などに拡大しています。欧州中央銀行(ECB)も9月、マイナス金利を深掘りし、量的金融緩和も再開するなどの対応を決めました。米中貿易戦争の悪影響が世界に広がっているためでしょう。
米国の利下げ開始も各国の行動に影響を及ぼしています。新興国だけで緩和を決めると、自国通貨が世界の基軸通貨であるドルに対して急落し、経済が混乱する恐れがあります。しかし米国が金利を下げ始めた結果、そのリスクが低下してきました。金利面でドルにも下落圧力がかかるためで、安心して動きやすくなったのです。
むしろ、金利を下げないと、自国通貨が上昇し、輸出面から景気の足を引っ張る恐れがあります。結果的に、通貨高を防ぐための緩和競争が起きやすくなったといえます。