「おいしいそば粉を選んで、自分で打ったそばを友人や家族と楽しむのは本当に楽しい」。そば打ちの魅力を語る阿部成男さんはそば打ち歴20年。今は「さいたま蕎麦打ち倶楽部」を主宰するベテラン。やればやるほど腕があがるのがそば打ちの面白さだ。
「水回し」不十分だとバラバラに
そんな阿部さんも自己流で初めて打ったときは「ゆで始めたとたん、バラバラに崩れた」。原因はそば粉に水をなじませる「水回し」が不十分だったこと。水がしっかり入っていない部分があると切れてしまう。
「そば粉の特性のせいですよ」。日本麺類業団体連合会会長で上野藪そば主人、鵜飼良平さんが解説する。小麦粉は水を加えると粘りを生むグルテンが出るが、そばにはグルテンがないため水を入れてこねても粘りが出ない。そこでそば粉の粒子の間に水を入れてつなぐ。これが水回し。水がなじんだかは見た目ではわからず「後から水や粉を足して修正もできない」(鵜飼さん)。そば打ちは難しい、といわれるゆえんだ。
初心者には小麦粉を2割加えた「二八そば」
阿部さんは「切れないそばを作る」と奮起し、そば打ちの魅力にはまった。「簡単ではない分、上達する楽しさは格別です」と話す。
そば打ちの基本的な流れは、粉をふるう→水回し→こね→丸めてから伸ばす→四角く広げる→たたんで切る……という具合。初心者にはそば粉100%は難しいため、小麦粉を2割加えた「二八そば」がよい。鵜飼さんは水に卵を加えるとつながりやすく、煮くずれないとすすめる。
鵜飼さんによると、キーワードは「均等」。水回しで粉に水を均等に行き渡らせ、こねたそば生地は均等な厚さに広げる。最後に均等な太さに切り分ける。
まず、水回し。両手指を立て、手のひらは使わずに、指先で水と粉をなじませる。「無理にまとめようとせず、粉が勝手にまとまるのを待つ」(鵜飼さん)。粉がパン粉状になり、さらに、おからくらいになってきたら「こね」へ入る。
自己流ではなかなかうまくいかない
表面につやが出るまでこねたら一つにまとめ、平たく伸ばす。「焦らずゆっくり広げること」(同)。伸ばした生地はたたんで、包丁とこま板を使い切っていく。ゆで具合にばらつきがないように、切るときは均等な細さを目指す。
諸説あるが、切ったそばは「1、2時間おいてから、ゆでるとおいしい」と鵜飼さんはすすめる。大きな鍋を使い、ゆで過ぎに注意しながら30秒~1分ほどゆで上げる。氷水できゅっとしめていただこう。