歴史に想いを馳せる酒ナショナル ジオグラフィック日本版

ナショナル ジオグラフィックが提案する一生に一度の思い出に残る旅を紹介する本シリーズ。2回目は長い歴史を歩んできた3つの酒、ペルーのピスコサワー、ポルトガル・マデイラ島のワイン、ベルギー・ブリュージュのビールを訪ねる旅です。

~ペルー ペルーの神髄を示す火酒、ピスコ~

ワカチナのオアシス。この景観と静かな湖水に魅了され、観光客や近くのイカの住民が訪れる。(c) Andrew Watson/John Warburton-Lee Photography/www.photolibrary.com

この無色に近いブランデーはペルーの誇り。名高いカクテル、ピスコサワーのベースでもある。

ブランデーが原因で2つの国が戦争の瀬戸際に追い込まれるなど、想像もつかないことかもしれない。だが実際に、ピスコはこの数百年間、ペルーとチリの争いの種になってきた。サッカーの代表戦や国境紛争に劣らぬ真剣さで、両国はともに、ピスコサワー(ピスコに卵白とビターズ、そしてレモンかライムを加える)が自国のカクテルだと強く主張してきたのだ。

ちなみに、ピスコ自体の起源ははっきりしている。16世紀のスペイン人入植者がペルー南部の海岸部で造ったのが始まりだ。ピスコという名は、その酒を積み出した港か、あるいは熟成用の円すい形の陶器にちなんでつけられた。

現在は、緑豊かな町、イカがピスコの生産の中心地となっている。80以上の蒸留所で造られるピスコは、毎年数百万本にも及ぶ。ピスコはアルコール度数38~46度の酒で、原料は単一品種のぶどう。最も一般的な品種は、スペイン人が持ち込んだ黒ぶどうのケブランタだ。だがマスカットなどの緑色のぶどうを使って香り高く仕上げたものもあれば、複数の品種をブレンドした強めのもの(アチョラド)もある。

ぶどうの収穫期は2~3月。蒸留後に3カ月以上熟成し、ようやく飲むに値する酒になる。昔気質のペルー人は、必ずこの酒をストレートで飲み、氷すら入れようとしない。彼らにとっては、ピスコサワーなど名酒への冒涜(ぼうとく)なのだ。

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■ベストシーズン イカは1年中暑くて乾燥しているが、南半球の冬の間(6~9月)は比較的過ごしやすい。3月には「ビンテージ祭り」が開かれる。

■旅のヒント イカは首都リマの320キロ南。家族経営の「ボデガ・エル・カタドール」ではぶどう畑と蒸留所の無料ツアーをやっている。小さな博物館、バー、レストランもある。法人経営の「ビスタ・アレグレ」も毎日ツアーをやっている。

【見どころと楽しみ】
<ペルー風セビーチェ>
ペルーの人とチリの人は、どちらがうまいセビーチェ(南米伝統のシーフード料理)を作るかでも張り合っている。レシピはいろいろだが、最も基本的なペルー風セビーチェの作り方を紹介しよう。
コルビナというニベ科の魚を、レモン、ライム、タマネギ、アヒ唐辛子を混ぜた漬け汁で3時間ほどマリネする。こうすることで生魚の身をしめ、かんきつ系の風味をしみ込ませるのだ。通常は、これに焼きとうもろこしの粒と、漬け汁の残りを入れたショットグラスを添えて出す。
昨今はサメ、タコ、イカ、海老、ホタテ貝、カニ、ムール貝や、いろいろな白身魚へとセビーチェの材料は広がっている。ピスコサワーの肴(さかな)としては、これにまさるものはない。
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