共働きも専業も、疲れ果てる主婦たち 日本の息苦しさ『なぜ共働きも専業もしんどいのか』

ここ数年、日本企業が「ダイバーシティー」の名のもとに女性活躍を推進している。外で働く女性も増える中で、専業主婦に対する風当たりが厳しくなったり、専業主婦自身、家庭外の責任を負っていないと苦悩したりすることもあるかもしれない。しかし、本書『なぜ共働きも専業もしんどいのか』によると、現代日本はむしろ専業主婦の存在なしには成立しない構造がいまだ続いていることが問題となっているようだ。著者の中野円佳氏は、2児を育てる気鋭の女性ジャーナリスト。

女性活躍を阻む日本の転勤制度

日本は専業主婦の無償労働に依存してきた「専業主婦前提社会」である――そう本書は指摘している。女性に全面的に家庭を任せ、男性が正社員の職に就いて家計を背負う。高度経済成長期以降にできたこの構造により、女性はパートタイマーなど制約のある人材として扱われ、かつ男性は長時間勤務などの無制限な労働環境に置かれてきた。共働き世帯が専業主婦世帯より多くなっている現在でも、この構造は残り、様々なほころびを生じさせている。

例えば、総合職で働いていれば、いつどこに転勤辞令が出ても断りにくいという日本のサラリーマン特有の雇用形態。家族側の状況を考慮しないこの枠組みのせいで夫の転勤に合わせて離職する女性はいまだに多い。本書で示される調査(「企業転勤の実態に関する調査」2017年度、労働政策研究・研修機構)によると、配偶者の転勤を理由に退職した正社員が過去3年間で「いる」と答えた企業は33.8%で、女性社員の数が多いほどこの割合は上がる。専業主婦を前提とした転勤という仕組みのために、キャリアを断念して専業主婦になるケースもまだまだ目立つ。

「子どもに向き合えない」という現実

専業主婦の無償労働依存の影響は保育・教育分野にも及んでいる。本書では、高度経済成長期に専業主婦が増加したことで保育ニーズが抑えられてきたことなどが背景となり、いまだに保育の質にかかわる公的な投資が十分に行われていない点が指摘されている。量・質ともに安心して預けられる場がなければ、働く母親は葛藤するものだ。日本経済新聞社主催の「働く女性2000人意識調査」によると、「仕事と育児の両立中に仕事をやめようと思ったことのある女性」は半数を超える。その理由として最も多く挙げられるのは、時間的・精神的に「子どもに向き合えない」というものだったという。

では専業主婦はどうか。こちらは父親が長時間家を空けていることで家事と保育を1人で背負い込むことになり、精神的な負担が大きくなりやすい。つまり専業でも共働きであっても、子どもとの向き合い方に四苦八苦していることは変わらないのだ。

専業主婦ありきの社会構造の矛盾をつき、これからの働き方について考えさせられる本書。あらゆる立場の人に読んでもらいたい一冊だ。

今回の評者=皆本類
情報工場エディター。女性誌のインタビューから経済誌の書評欄まで、幅広いテーマの取材・執筆に携わる。近年は、広告・PRプランナーとして消費者インサイトの発掘や地方若者議会の「広報力養成講座」の講師も。

なぜ共働きも専業もしんどいのか 主婦がいないと回らない構造 (PHP新書)

著者 : 中野 円佳
出版 : PHP研究所
価格 : 880円 (税抜)

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